2022年02月14日 公開

特集 新春座談会 未来を見据えた職場づくり ~大田区ものづくり企業・未来への展望~

令和4年が明けました。新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に進むとともに、人材の多様性(ダイバーシティ)が重視されるなど、いま日本では「働き方」が大きく変化してきています。周りを見回せば、中小製造業の現場ではすでに女性や障がい者、外国人が活躍し、設備面で不利とされたテレワークも普及してきました。町工場は人材活用の最先端なのでは?と思わせる先進的な取り組みをしている方々にお集まりいただき、「未来を見据えた職場づくり」を語っていただきました。

司会:本日は「未来を見据えた職場づくり」と題し、それぞれ特徴のある4社にお集まりいただきました。まず、女性人材が活躍されているシナノ産業さんから、自己紹介をお願いします。

柳澤さん:プラスチックの切削加工を行っています。お客様の業界は幅広く、最近は趣味でものづくりをされる個人の方からもご依頼をいただいています。私を含めて8名の小さな会社で、気が付いたら半分の4名が女性でした。大田区産業振興協会主催の企業説明会や求人情報サイト「おしごとナビ大田区」で募集・採用しています。

司会:昭光機器工業さんでは外国人人材が活躍しています。日本人の若者がものづくりに興味を持たないと言われることも影響していますか?

土屋さん:弊社は昭和電線グループの一員として、主に電線・ケーブル用付属品と発変電機器向けの金属加工部品の製造を手がけ、機械加工や絞り加工を行っています。従業員は90名で、中国出身者2名とベトナム出身者が1名います。ハローワーク等で募集していますが、古い設備が多いこともあって学生さに魅力を感じていただけないのが実情です。その点、外国の方は日本で豊かな生活をしたいという気持ちで来られていますので、在留資格のある方たちを積極的に採用しています。

司会:ニイヅマックスさんは、試作部品加工のスペシャリストである新妻精機さんのグループ会社ですね。設計作業までテレワークで可能にしたとうかがっています。

相馬さん:事務用複合機や光学機器メーカーの生産設備を設計し、部品加工は新妻精機や区内協力企業にお願いし、弊社で最終組み立てを行い、検査・納品しています。コロナ禍以前より取引先のお客様や山形の拠点とオンラインでのやり取りを行うなど、環境構築を進めていた事もあり、テレワークの導入もスムーズに行う事が出来ました。

司会:三和産業さんは、障がい者雇用で実績があります。

幸田さん:板金加工を手掛け、通信機器や産業用機械に用いる精密部品と大物の製缶の二つの部門があります。父が急病で私に代が変わった5年前に、廃業した近所の2つの会社の仕事を引き取り、6名だった社員が22名になりました。事業が一気に拡大し繁忙を極めたなかで知的障がい者4級と3級の方2名も採用しました。

photo2

昭光機器工業株式会社
代表取締役社長 土屋 裕二

photo1

シナノ産業株式会社
代表取締役 柳澤 かおり

photo3

株式会社ニイヅマックス
管理部 情報システム課 課長 相馬 浩

photo4

株式会社三和産業
代表取締役 幸田 行弘

photo2

昭光機器工業株式会社
代表取締役社長 土屋 裕二

photo1

シナノ産業株式会社
代表取締役 柳澤 かおり

photo3

株式会社ニイヅマックス
管理部 情報システム課
課長 相馬 浩

photo4

株式会社三和産業
代表取締役 幸田 行弘

人材採用は難しい?

司会:町工場が人材の採用に苦心しているという話はよく聞きます。多様な人材が働いているのは、他にいないから、という消極的な理由なのでしょうか。

土屋さん:弊社で働く3人の外国出身者のうち、1人は中国の女性で総務の業務をしています。もう1人の中国の男性はすでに24年のキャリアがあり、現在は製造の課長として、先月入社したばかりのベトナム出身者に教える立場です。国籍が違っても、持っている技術を周囲が認めてあげれば、彼らは自ずとモチベーションを上げ会社に貢献してくれます。会社としてもできるだけ評価の方法を定量化していますし、国籍で給料に差をつけるようなことはありません。弊社では「作業者」という言葉は使わず、付加価値を作る「技能者」だと教育しています。

女性が長く活躍できる現場とは

司会:女性が工作機械を扱うのも最近は当たり前のようになっています。

柳澤さん:特に意識したわけではないのですが、募集をかけた時に応募してくれた人がたまたま女性でした。最初に入社した女性は高卒で18歳でしたが、今は33歳になっています。その社員が長く勤めてくれているおかげで、後に続く人たちも抵抗なく仕事を続けられているのか、一番の若手もすでに6年間勤続しています。工場長をはじめ年長者が後輩に優しく指導する環境があり、「分からなかったら何度でも聞いていいよ」という姿勢で教えてくれているので、とても助かっています。

司会:設備面で女性を意識したものはありますか。

柳澤さん:最初に女性社員を採用した15年前は男女別のロッカールームがなく、着替えをする時はカーテンを下ろしていました。工場を新しくした際に広めの女性専用ロッカールームを作りました。

働き方改革の中にテレワークを

司会:テレワークで設計までできるとなると、地方都市の若者を現地採用できるようになりませんか?

相馬さん:弊社は以前から製造業としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうと考え、情報の見える化やオペレーションの効率化、グループウェアによる部門を超えた社内の情報共有などを進めてきました。設計者は東京の他に山形テクニカルセンターにも2名の設計者がおります。引き続き山形での設計者の採用も検討しております。テレワークを行っている技術者は自宅のパソコンから会社のワークステーションへリモートアクセスを行い3D-CADによる設計作業を行っています。データも暗号化されており情報自体は外部に出さないのでセキュリティは守られています。最近では技術打合せだけでなく、お客様へ納品前にオンライン立会による動作チェックも行っております。社長は今後も人材採用のためには働き方改革が必要と言っています。

新妻知幸社長コメント

弊社は今後も、Z世代(1990年台後半~2020年代初頭に生まれた人々)のニーズや意見を理解し活躍しやすい環境を用意するためにも長時間労働の是正など働き方改革を続けます。

障がい者雇用で社内が温かく

司会:大手企業の障がい者雇用は「社会貢献」のように語られることがありますが、三和産業さんでは障がい者の方は貴重な戦力なんですね。

幸田さん:2019年の夏ごろ、弊社は事業規模が一気に拡大し、総務の社員が袋詰めや塗装検査といった本来の仕事ではない作業をしなければならない状況でした。誰かがやらなければならない単純作業を、障がい者の方に任せてみたらどうだろうと考えたのはその時です。現在、21歳と52歳の知的障がい者の方が働いていて、塗装検査などはピカイチですよ。どんな小さなゴミも見逃しません。集中力に長けているのだと思います。2人ともカシメ作業などを楽しそうにしていて、目が生き生きとしています。

司会:受け入れ態勢をきちんと整えたことが大きいのでは?

幸田さん:障がい者雇用について私も講習を受けましたし、彼らを見守る女性スタッフも配置しました。テラスではカメとメダカを飼っています。それだけでなく、社内のいかつい男たちが、「いつもありがとうな」なんて優しく声をかけるようになったんです。障がい者雇用を始めて3カ月目には、それまでとは違う何かが芽生えてきたことを実感し、4カ月目には全社員が障がい者チームに溶け込んで、社内の雰囲気が温かくなっていました。

司会:これぞ、まさにダイバーシティですね!令和4年の大田区のものづくりは、ぜひ多様性をテーマにしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

ページトップへ

大田区産業振興協会について | お問い合わせ | 個人情報保護ポリシー

Copyright©2015 公益財団法人大田区産業振興協会 All Rights Reserved.

PAGE TOP