企業間連携~区内企業の挑戦~

区内企業同士が連携し、一つの製品を開発する事例が増えています。背景として、企画や設計ができる企業が増えてきたこと、コロナをきっかけに、新製品の開発に取り組む企業が増えたことが挙げられます。大田区の伝統的な「仲間まわし」に加え、異業種や海外といった「外」との企業間連携に挑戦する区内企業の事例を紹介します。

①おおた農水産業研究会

農水産業の課題を連携の力で解決

(株)カセダ 代表 加世田 光義氏

農業従事者の高齢化や担い手の不足、農林水産業をめぐる環境の変化により、現場は様々な課題を抱えています。秋田県では名産の漬物「いぶりがっこ」を作るのに、1本1キログラム以上ある大根を縄で10本1組に縛り、天井に吊り上げ、いぶす必要がありますが、高齢化に伴って難しい作業になっていました。そこで、「大根持ち上げ機」を開発したのが、おおた農水産業研究会です。これまでにミニ植物工場、ひまわりの種の播種器など10製品以上を実用化しています。

おおた農水産業研究会は、大田区産業振興協会と日本各地の金融機関との連携による農業ニーズの発掘をきっかけに、区内企業の有志が農業技術を開発する農援隊(島根県)の小豆澤社長と出会って活動を本格化させました。H29年に共同で「おおた農水産業研究会」を設立し、現在、メンバーは10社。会長を務める加世田光義氏が主に設計を担当し、研究会のメンバーとものづくりを分担して最終製品へと仕上げています。「30年前から異業種交流で企業間連携の意識はあったが、製品を外へ売るのは難しい」(加世田氏)なか、おおた農水産業研究会は連携の力を生かし、海外まで進出しています。

農工連携で世界を目指す

今では農林水産省等からの提案を受け、ルワンダ、ウガンダなどのアフリカ各国からのニーズに応えています。その一つがアルガン実破砕機です。

アルガンの実はモロッコの南西部のみに生息するアルガンの木の種子で、種子からとれる油はアルガンオイルとして古くから化粧品や料理に利用されています。アルガンオイルを絞るには、まずハンマーで叩いても割れない固い殻から、中にある仁核をつぶさないように取り出す必要があります。「工業製品の部品は縦・横・高さ・重さが決まっているため、設計は簡単。しかし、農産品は、大きいリンゴも、小さいリンゴも加工できるように設計しなければならない」(加世田氏)という特有の難しさがあります。アルガン実破砕機では、実の大きさの幅をミリ単位で把握し、ゲージを調整すると、実を置くだけで自動的に殻を砕き、仁核を傷つける確率を少なくするよう取り出すことできます。今後、モロッコに輸出することが決まっています。

アルガンの実と殻
アルガン実破砕機

②株式会社カラーズ&有限会社関鉄工所

現場のアイディアをカタチに

直進軽快車いす

一般の道路は水はけのために両端を低くする「水勾配」がついています。このために、車いすを押して進もうとすると低い方へ曲がってしまい、介護者はまっすぐ進むのに大変な苦労をします。この課題を解決するため、前輪を固定した「直進軽快車いす」を共同開発したのが、金属加工の関鉄工所と介護サービスのカラーズ。曲がるときには前輪を浮かせばいい、そのために車軸の重心位置をずらすという逆転の発想は、「互いに門外漢という『外』同士の連携だからこそ生まれました。」

(株)カラーズは、在宅介護サービスを中心に福祉用具のレンタルや小売販売を行っており、利用者や地域のニーズに合わせたサービスの開発に積極的に取り組んでいます。そのため、社内では定期的にアイディアを募って会議を開いています。しかし、アイディアを具体的な形にするすべがありません。(株)カラーズ代表の田尻氏は他業種や地域とのつながり作りを意識して活動していました。一方、関鉄工所の関社長も、「自分の会社だけでは製品は完成しない。周りの工場から部品を調達して組み立てるだけでなく、ネットワークを広げることで扱う製品の幅も広がる」と外との連携を意識していました。

アイディアをまとめたノートを見返す田尻代表(左)と関社長(右)

そんな両者は4年前、東京商工会議所大田支部の会合で出会いました。

「関さんが何でも作れますと言うので」、「そんなこと言ったかなあ」と笑う二人。打ち合わせはすぐに始まり、お互いに製品のアイディアを出し合い、ノートにぎっしり書き込んでいきました。そのなかから、ニーズの高さや実現の可能性を考えて車椅子の開発にたどり着いたと言います。

ニーズに応えた製品開発へ

直進軽快車いすと田尻代表、関社長

介護の現場にいる田尻氏からは、「お年寄りの中には、ボタンを押してからレバーを引く、といった2つの作業をこなすのが難しい方もいる」「バッテリーの充電など誰でも容易にできると思うのは間違い」など、厳しい指摘が続きました。
関氏は「工場の中で使う台車なら作ることはできる。しかし、車椅子は人が利用するもので、田尻氏から現場のことを聞きながら試作を進めていった」と言います。一方、田尻氏も工業分野は未知の領域。関氏が説明する専門用語が分からず、「理解しあうのに時間をかけた」と話します。

こうして、改良に改良を重ねた車椅子の試作機は最終段階に入っています。今年の2月に特許を取得し、現在、最終形態の6号機を作っています。認可を取得後、今年度中に市場に出していく考えです。

連携の力で製品を開発しても、「売った後のメンテナンスや販路の開拓は中小企業にとって大きな負担」(加世田氏)であり、複数企業が関係すると利益配分や責任の所在なども難しい問題です。

「おおた農水産業研究会」では、ニーズを持ち込んだ顧客に納品する態勢が整えられ、メンテナンスや責任は発注元が負うようになっています。「直進軽快車いす」では、(株)カラーズが販売を担当し、ものづくり分野に現場の声を届け、特許・助成金の申請の手続きを行っていました。それぞれの分野で役割が明確になっており、工業のネットワークをつないでくれるハブ役を務める方がいたことも連携が進んだ要因と考えられます。

企業の取り巻く環境が厳しい中、企業の研究開発は活発化しており、農業など、企業の技術によって解決が見込まれる成長分野とも言われています。新製品開発や、新分野への参入において、企業間連携はその入り口となり、後押しともなります。田尻氏は「今回の経験を得て、様々なノウハウを蓄積することができた。区内の町工場では何でも作れる。これからも利用者の生活ニーズに合ったものを開発していきたい」と今後の意気込みを語ります。

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