2021年04月05日 公開

第32回大田区中小企業 新製品・新技術コンクール 受賞企業インタビュー

「第32回大田区中小企業 新製品・新技術コンクール」では43社の応募があり、9社が入賞しました。昨年度の倍以上の応募があり、区内企業の新製品の企画・開発が盛んとなっています。

今回、入賞した製品の内、最優秀賞を受賞したBoCo(株)、優秀賞を受賞したイービーエム(株)、テック大洋工業(株)の担当者様に応募したきっかけ等について、お話を伺いました。

BoCo株式会社

PEACE TW-1
PEACE TW-1
BoCo(株) 製造部 中島部長
BoCo(株) 製造部 中島部長

①応募したきっかけについて

多くの優秀な企業が集積する大田区で製造していますので、力試しと思い応募しました。

②受賞した骨伝導技術を活用したヒアラブル聴覚機器「PEACE TW-1」について

最優秀賞を受賞した「PEACE TW-1」は、世界初の骨伝導技術を活用した完全ワイヤレスイヤホンです。通常のイヤホンは、耳の穴から空気振動が入り、鼓膜を揺すって、聴覚神経へと音を伝えています。一方、骨伝導は、鼓膜を通さずに骨を伝わり聴覚神経に直接振動を伝えます。そのため、鼓膜を傷めず、周囲の音を聞きながら会話も楽しみながら音楽を聴くことができる安心・安全なイヤホンです。

③苦労したこと、会社の強みについて

BoCo(株)は2015年に代表である謝 端明(しゃ はたあき)氏と骨伝導の特許技術を持つゴールデンダンス㈱と共同で設立。八重洲に本社を構え、区内のテクノWINGで、部材の調達から設計・製造を手掛けています。自社の特許技術を活かし、「PEACE TW-1」の他、聴覚補助のイヤホンや、スピーカーなど様々な製品を開発・製造しています。

自社では特にデバイス力、量産技術力、制御技術力の3大技術が優れており、「PEACE TW-1」に使用されている小型骨伝導デバイスは、世界最小クラスの直径10mmで、周波数帯域4Hz~40KHzとハイレゾ級の音質が楽しめます。独自開発した自動組立設備により、ミクロン単位の精度が要求されるデバイス生産の完全自動化を実現しました。独自の特許による骨伝導デバイスであり、全て自分達で開発を進めなければなりませんので、そこが大変でもあり、面白くもあります。

④今後の展開について

現在は聴覚補助タイプと個人で音楽を楽しむBtoC向けに展開していますが、骨伝導の特長を活かし、騒音の中でも周囲の音が聞こえる工事現場や消防、コールセンターなどのBtoB向けの市場開拓を考えております。
また、今や日本だけでなく世界でも高齢化が進んでいます。難聴になると、耳から脳へ情報が遮断され、認知症になりやすいと言われています。若年層にも難聴のリスクが広がっていることから、当社では鼓膜を傷めない音楽用イヤホン、そして鼓膜が傷めた場合でも聴くことができる聴覚補助用イヤホンを世界へと広げていきます。

受賞企業:イービーエム株式会社

TAMAGOYAKI
TAMAGOYAKI
イービーエム(株) 朴代表取締役社長
イービーエム(株) 朴代表取締役社長

①応募したきっかけについて

1つ目に新製品・新事業開発の補助事業の採択を受けているので成果物を発信したいことと、2つ目にコロナ禍で売り上げが減少して、大変だからこそ、顕彰事業に応募して勢いをつけたいと思いました。

②受賞した冠動脈バイパス手術における内視鏡下静脈グラフト採取術(EVH)訓練用シミュレータ「TAMAGOYAKI」について

冠動脈バイパス手術では、内視鏡下で、太ももの静脈血管を採取し、心臓に縫い合わせ、新しい血液の流れる道を作成します。「TAMAGOYAKI」は、その血管を採取するためのトレーニング機器です。

製品は主にシリコーン樹脂でできていますが、複数のシリコーンを用いることで剥離の強度を制御しており、血管や周囲の脂肪組織など人間の組織の状態を精巧に再現しています。実際の臨床の手術において、難しいポイントも再現しているため、効率・効果的にトレーニングが行えるのです。今はコロナの影響で、心臓外科医の手術が減っており、トレーニングには絶好の機会です。「TAMAGOYAKI」は大がかりな用意の必要はありません。机の上ですぐにトレーニングを始めることができます。

③苦労したこと、会社の強みについて

樹脂の取り扱いがすごく繊細で、製品を1年間保存すると血管を再現した樹脂が膨潤し伸びてしまったことです。十数年シリコーンを扱ってきましたが、これは想定外でした。血管が伸びてしまうと、トレーニングした時の感覚も変わるため、全て処分しました。試行錯誤を繰り返しながらこの問題を解決しましたが、製品を出す者の責任を痛感させられた製品でもあります。

会社では、金型の切削加工から樹脂の成型・配合も行っているため、現場のニーズからすぐに試作から開発まで対応できるスピードがあります。現場から相談があったときに、すぐに試作し、形にして提供し、商品として売れる体制を作ることができます。このスピードこそがイービーエムの強みです。また、自社で切削加工もできるため、製品に課題があったときなど、すぐに対応することもできます。

④今後の展開について

「TAMAGOYAKI」はアメリカを含め4ヵ国の輸出が完了していますが、残りの30ヵ国はまだ輸出できていないので、コロナが落ち着いたときに、早期に製品を輸出していきたいと思います。世界大手の医療機器メーカーから標準モデルとして採用されており、全世界が「TAMAGOYAKI」を使って、トレーニングすることになります。

受賞企業:テック大洋工業株式会社

Tell Tell board
Tell Tell board
テック大洋工業(株)  左から小林部長、河野係長、鳥潟副社長
テック大洋工業(株)左から小林部長、河野係長、鳥潟副社長

①応募したきっかけについて

鳥潟さん:大田区産業振興協会様から新製品・新技術コンクールのご案内をいただいたのがきっかけです。他の製品を応募することも検討しましたが、大田区の公募のプロポーザルでご採用いただいた独自性を発揮した掲示板が当コンクールに一番ふさわしいと思いました。

②受賞した独立電源式内照型LED掲示板「Tell Tell board」について

小林さん:今回のLED掲示板は内照式LED照明を備えているというのが大きな特徴の一つです。

今までも、内照式の掲示板はありましたが、独立した電源を持たず、外から電線を引いてくる必要がありました。この製品は付属のソーラーパネルから、LEDを点灯する電力をまかなうため、電線が必要なく、設置場所を自由に選ぶことができます。
また、外照式タイプだと光がガラスに反射して中の掲示物が見えづらく、ガラスに反射した光が車などの運転手の目に入り、事故につながる恐れもあります。当社の掲示板は、内照式LEDの光が内側のガラスで反射し、外に出てくるのは弱い光のため、まぶしさを感じさせません。仮に車にぶつけられたとしても、柱に特殊な鋼材を使用しており、衝撃に強く、その塗料には高機能防錆塗料を使用しているため、表面の傷も目立ちません。

河野さん:いろいろな町中の掲示板を見ると、破損がひどく、腐食が進んでいるものも多くありますが、当社の掲示板はそのような事例を踏まえ製作しています。また、掲示板は人通りの多いところにも設置されるため、掲示板の端を角張らせず、丸い形状にし安全に配慮しました。さらに、高級感が出るようにスマートなデザインにしています。

③苦労したこと、会社の強みについて

小林さん:限られた電力で夜間に最大限掲示物を照らすのに苦労しました。開発にあたって、コストを抑える考えで出発しましたが、初期の検討では市販されているバッテリーで1個1万円の物を6個使用するような大掛かりなものとなりました。検討を重ねた結果、最終的には、充電池3本に抑えることができました。充電池3本の課題としては弱い光で効率よく掲示板内の全面を明るく照らすことでした。LEDの角度を変えたり、当社で開発した反射率95%の反射板を組み込みこんだりし、実験を重ねました。

鳥潟さん:当社では公園施設や動物園施設、都市環境施設の特注品を扱っており、設計から製作、据付まで一貫して社内で行うことができます。金属加工の工場があり、様々な特注製品を取り扱ってきたことから派生して、いろいろな製品を開発できるのが強みです。

④今後の展開について

河野さん:今後は展示会に出展し、PRしていきます。その際、特別に暗室を作り、暗闇の状態で掲示板面の光具合を見てもらうなどの展示の方法を考えております。

小林さん:デジタルサイネージが普及していますが、アナログ掲示板から情報収集している住民の方も相当数いらっしゃいます。まだまだ需要はあると考えています。

「経験一つ一つが学びとなる」と語った朴代表をはじめ、皆様の話をお伺いして、技術開発や絶え間ない挑戦により、生み出されてきた製品が新たな実績を積み重ねる。
企業として大きな強みを築いていくと感じた取材でした。

  • 大田区中小企業 新製品・新技術コンクールの詳細は こちら
  • 第32回入賞製品・技術の詳細はこちら

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(公財)大田区産業振興協会 イノベーションセクション イノベーション担当
〒144-0035
東京都大田区南蒲田一丁目20番20号 大田区産業プラザ3階
TEL 03(3733)6294 FAX 03(3733)6459
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