IoTが生むビジネスチャンス ~「仲間まわし×IT」に観る課題と可能性~

IoT(Internet of Things)という言葉がメディアを賑わせている。

大田区のものづくりの特徴である「仲間まわし」に、最新のIoTツールを活用する新たな挑戦が始まった。多数のまち工場がプロジェクトチームを組みながら、IoTツールの活用により短期間で付加価値の高い製品を完成する。IoTの現状と課題をリポートする。

大田区は平成28年度に「IoTを活用した仲間まわしによる中小企業の生産性向上プロジェクト」に取り組んでいる。
取組みでは区内企業3社が仮想の製品「下町ボブスレーの展示モデル」を開発・製造した。制御機器を開発・製造するフルハートジャパンがハブ企業として全体を統括するとともに電装関連を担当、金属部品の切削加工はエースが担い、板金加工の東新製作所が金属3Dプリンタを活用しボブスレーのボディなどを製作した。
モデルの開発から加工、完成までの約40の工程の進捗をICタグで自動的に管理し、確認した。そこから、まち工場のIoT活用には、検討するべきたくさんの課題があることがわかった。

納期遅れの情報を把握

ボブスレーの模型とその台座・背面ボードで構成され、照明効果まで考えたユニットすでに区内企業の多くは独自の生産管理システムや受発注処理システムを保有し、分工場や協力工場とデータを共有する例も多い。
しかし将来に向けては、そのデータをいかに活用して付加価値を生むかが課題だった。今回の取り組みでは、単なるデータ管理でなく、単独の「待ち工場」から、複数の町工場が連携してユニットや完成品の開発から受注するような「価値工場(かちこうば)」へのビジネスモデルの変革を目指していた。展示モデルは単独部品ではなく、ボブスレーの模型とその台座・背面ボードで構成され、照明効果まで考えたユニットを3社で開発した。

しかし、取り組みのなかで、部品の接合部の寸法が合わないなどのトラブルにより納期遅れが発生、参画各社が自社の最終納期しか意識していないことが課題として浮上した。また、計画時点でのリードタイムの設定根拠があいまいで、進捗に合わせた計画の修正もうまくいかなかった。
一方で、ICタグで管理しているため、納期遅れの発生などの情報把握は、従来より遥かにスピーディーにできたという。

最終目的は仕事の獲得

ICタグで管理しているユニット今後のIoTの活用について、エースの西村修社長は「IoTの最終的な目的は、新たな仕事を獲得すること」という。
同じくフルハートジャパンの國廣愛彦社長も「すでに自社の本社工場と茨城工場の間で生産管理システムのデータを共有しているが、把握したデータをいかに活用するかが課題」と話す。
IoTは単なる生産管理システムではなく、集めたビッグデータを活かして付加価値を生まなければ意味がない。

仲間まわし×IoTの基盤整備の中で、区内企業の集積があたかもひとつの企業のように動く「下町IoTファクトリー」をつくり、完成品開発などの付加価値の高い仕事の獲得を目指していく。
東新製作所の石原幸一社長は、「これからの中小製造業は、新しい価値を創造するとの観点で顧客と付き合っていくべき。何が大田区製造業の提供できる付加価値なのか、考える第一歩になった」と話す。

伝統的な強みである仲間まわしにIoTが加わる時、そこに新たなビジネスチャンスが生まれる。

特集記事一覧へ

PAGE TOP