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事業計画策定への取り組みについて

創業コラム
執筆者:杉本 幸雄

数字の前に「想い」を形にする

初回面談前に用意された事業計画では、まれに以下のようなケースがあります。

・ネット等で入手したフォームにきれいに記載
・売上や経費の見通しを中心とした計数計画(主に金融機関向けの創業(開業)計画)
・パワーポイントなどを活用したプレゼンテーションベースの事業計画書(計数計画が簡略)

上記ケースで不足している内容は“創業の想い”、“実現したい想い”です。事業を行うには想いを如何に具体化するかがとても重要です。

事業計画は「数字から」ではなく「想いの言葉から」始める

事業計画書と聞くと、損益計算書や資金繰り表を思い浮かべるケースが多いです。しかし数字はあくまでも「結果」であり、その土台となる思考が固まっていなければ、どれだけ精緻な計数計画を作っても単なる計算になってしまいます。実は利益が出るように計算をすると、ある程度の収支計画は出来てしまいます。ただし、根拠が曖昧です。

まず取り組んでいただきたいのは、事業への想いを言葉にすることです。

「なぜこの事業をやるのか」「誰のどんな課題を解決したいのか」「この事業を通じて社会にどんな価値を届けたいのか」――こうした問いに向き合うことが、事業計画策定の最初の出発点です。想いが明確になると、事業の理念が自然と生まれ、ブレない経営の軸と覚悟が生まれます。

5つのステップで事業を立体的に描く

想いが言語化できたら、次の順序で事業を多面的に描いていきます。

①事業の位置づけ:自社はどんな分野で、誰に向けて、何を提供する事業なのかを明確にします。事業の輪郭を描く作業です。
②事業の強み:自分自身および事業の強みをはっきりと意識し、差別化戦略へ繋げます。
③事業の方針:目指すべき方向性や、競合と差別化するための戦略的な考え方を整理します。「どのように戦うか」を定める羅針盤です。
④市場・マーケットの把握:自社が参入しようとする市場の規模、顧客層の特性、競合環境などを客観的に分析します。根拠のある数字を積み上げるために欠かせないプロセスです。
⑤計数計画:販売計画、経費計画、損益計画(P/L)、資金繰り表、資金計画書へと落とし込みます。ここに至って初めて、想いが計数化されます。

★このステップで検討することが、実は大きなマーケティング戦略となります★

なぜこの流れが重要なのか

この流れを逆にして、数字から入ってしまうと、かえって甘い計画になる可能性があります。根拠の薄い売上目標に合わせて経費を逆算したり、「何となく見栄えのいい計画」を作ることに終始してしまったりするのです。最初から儲かるのか?儲からないのか?を意識しすぎると、本来考えておくべきこと、気づくべきことがおろそかになり、見栄えだけよい計画が出来てしまいます。このような状態で事業をスタートさせてしまうと、「売上が上がらない」、「思うように集客ができない」、「適切な提案ができない」などの状態に陥り、根本原因が分からないまま、悶々とする日々を多く過ごすことになってしまいます。

一方、想いと事業の構造をしっかり言語化した後に計数計画を作ると、「なぜこの売上目標なのか」「この経費は本当に必要か」という問いに自分自身の言葉で答えられるようになり、自身の強み、商品・サービスの差別化が明確化され、多くの不安を解消した事業のスタートが望めます。融資や補助金の審査においても、数字の背景にある思考の深さ、および経営者・事業責任者の熱意も審査担当者に伝わるものです。

事業計画とは、未来への地図であり、経営者自身の覚悟の表明でもあります。まず「想い」を丁寧に言葉にすること、そこから、すべての計画は始まります。事業計画策定では、慌てて計数計画に着手するのではなく、まず自身の想いと向き合い、想いを文字化(他者に伝わる文字化)、その上で計数化を図る事が重要です。

執筆者:杉本 幸雄

大手Sierに数十年在席し、数々のITプロジェクトに関わる。晩年は公共部門にて医療・介護システム部門責任者として多くの開発プロジェクトに関わる。関係省庁へのプレゼンテーションも行っている。
在籍中は毎年のようにエポック的プロジェクト関わり度々社長賞を受賞。
2016年に株式会社ソシオケアスタンダードを設立し、医療・介護、福祉分野に関わる。
2017年からは行政での創業支援に関わり、現在では年間700件弱の面談を行い、多くの創業者を輩出している。
事業計画策定にあたり、多くのフレームワークを活用して創業者の思いを文字化、数値化し、創業支援を行っている。
現在も医療・介護、福祉分野、飲食、小売り分で多くの相談を担当している。

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