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創業時に知っておきたい社会保険の基礎知識

創業準備では、事業計画の作成や資金調達、販路開拓などに多くの時間を費やします。一方で、法人設立後に必要となる社会保険の手続きについては、「代表者一人の会社でも加入が必要なのか」「従業員を雇用するまで手続きは不要ではないか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
創業当初は事業を軌道に乗せることが最優先となりますが、社会保険は後回しにしてよい手続きではありません。制度を正しく理解し、適切な時期に対応することで、手続漏れや認識違いを防ぐだけでなく、安心して事業をスタートさせることにもつながります。
社会保険とは何か
「社会保険」とは、病気やけが、老後などの生活上のリスクに備えるための公的な保険制度です。会社を設立する際に関係する制度としては、主に健康保険と厚生年金保険が挙げられます。健康保険は、業務外の病気やけがなどに備える制度であり、厚生年金保険は老齢・障害・遺族年金などの保障を充実させる制度です。
一方、個人事業主として事業を開始する場合は、原則として市区町村が運営する国民健康保険と国民年金に加入します。これに対し、法人を設立した場合は、加入要件を満たせば健康保険と厚生年金保険の適用対象となる点が大きな違いです。創業時には、自身がどちらの形態で事業を始めるのかによって加入する制度が異なるため、開業後に慌てることのないよう、あらかじめ制度の違いを理解しておくことが大切です。
※個人事業主の場合、原則として国民健康保険と国民年金に加入しますが、常時5人以上の従業員を雇用する一定の業種の個人事業所では、健康保険・厚生年金保険の加入が必要となる場合があります。また、一定の要件を満たす個人事業所が、従業員の同意を得て社会保険に任意加入することもできます。詳しくは日本年金機構等の最新の情報をご確認ください。

法人設立時の社会保険加入の考え方
法人を設立した場合、健康保険法および厚生年金保険法に基づき、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。そのため、代表者一人で事業を開始する場合であっても、社会保険への加入手続きが必要となります。
「従業員を雇用するまでは社会保険に加入する必要はない」と考えられることがありますが、これは個人事業における考え方と混同されることによる誤解の一つです。法人では、従業員の人数だけで加入の要否が決まるものではなく、法人であること自体が適用の判断に影響します。そのため、創業時には「従業員がいないから大丈夫」と自己判断するのではなく、自社が加入対象となるかを確認することが大切です。
社会保険は、病気やけがをした際の医療保障や、老後・障害・遺族に対する年金制度を通じて、働く人の生活を支える重要な仕組みです。創業当初は事業計画や営業活動、資金繰りなどを優先しがちですが、事業を継続していくためには、経営だけでなく、自身や従業員の生活を支える制度について理解しておくことも大切です。不明な点がある場合は、年金事務所や社会保険労務士などに相談し、創業準備の段階から確認しておくことで、将来を見据えた事業運営の基盤づくりにつながるでしょう。

創業者が迷いやすいポイント(Q&A)
代表者一人だけの会社でも、社会保険に加入する必要がありますか。
法人は原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。代表者一人で事業を開始する場合であっても、加入要件を満たす場合には加入手続きが必要です。従業員がいないことだけを理由に、加入が不要となるわけではありません。
法人を設立したばかりで、まだ売上がありません。それでも手続きは必要ですか。
社会保険の適用は、売上の有無ではなく、法令に定められた加入要件に基づいて判断されます。事業開始直後であっても、加入対象となる場合がありますので、設立後は早めに確認しましょう。
社会保険と労働保険は同じものですか。
異なります。健康保険・厚生年金保険は「社会保険」、労災保険・雇用保険は「労働保険」であり、それぞれ加入要件や手続きが異なります。制度を区別して理解することが、適切な手続きにつながります。
執筆者:上村 和弘
中小企業診断士、社会保険労務士、およびキャリアコンサルタントの資格を保有する「経営と労務」の専門家です。
外資系医療機器メーカーでの営業職を経て、経営コンサルティング会社にて100社以上の支援をしてきました。
2011年の独立以降は、創業期から成長期にある事業者の「人」と「お金」に関する課題解決に注力しています。
現在は年間約80件の研修講師を務めており、難解な制度や理論を現場視点で分かりやすく紐解く解説力には定評があります。
大田区の創業相談員として、製造業からソーシャルビジネスまで、多種多様な挑戦が生まれるこの街で、
一社一社の事業が地域に根付くよう、誠実にサポートいたします。