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経営持続力の源泉『志』

創業は、取引の集合体である事業を自らの力で興す事です。初めての創業手続き、初めての資金調達、初めてのマーケティングづくり等、初めて尽くしを乗り越えて、ゼロイチで事業を構築する必要があるため、相当量のエネルギーが必要になります。
スマホやパソコンがあれば気軽に始められる事業から、不動産物件の確保や設備投資等の初期投資が相応に必要な事業まで、創業の形は人それぞれですが、背負うものが大きければ大きい程、必要エネルギーも大きくなります。
そして、創業する事業の人生に占めるウェイト次第で人生を大きく変える契機になる創業では、事業を始める事がゴールではなく、事業を長続きさせる事にこそ価値があります。全てが順風満帆なら良いですが、自分の身は自分で守らなければならない創業では、数多くの困難を乗り越えていく必要もあるでしょう。
その困難にも挫けず、突き進むエネルギーの源泉となるのが『志』です。
1.『志』の定義
日本語大辞典(講談社)によると、志の定義は「心に定めた目的。信念」となっています。
創業界隈でよく使われる「夢」や経営用語でいう「ビジョン」に言い換えられるかもしれませんし、創業計画書にある記載項目の「創業動機・目的」と同義と捉えても良いでしょう。
2.『志』の性質(距離感・内外向度・強度)
少し抽象化していますが、『志』の一例は次の通りです。
①特定の社会課題を解決するため、独自の製品・サービスを開発して社会実装させたい。
②自身の苦難を乗り越えた実体験を基に、同じ悩みや課題を抱える人達を助けたい。
③これまでの経験や人脈を活かして、独立して独自の事業を興したい。
④副業・兼業型で事業を始めて、今より収入を増やしたい。
⑤先輩起業家の成功に刺激を受けて、自分も創業して成功したい。
創業の形同様、『志』のあり方も人それぞれなので一概には言えませんが、距離感・内外向度・強度の観点から、志の性質を捉える事ができます。
距離感
①②は5~10年後等の未来像に通じていますが、③では興した独自の事業で何を目指すのかという次なる志が欲しい所です。④⑤では、収入増の水準や成功の定義次第ですが、「HOW(どうやって)」が不透明なので、解像度を高めていく必要があるでしょう。
内外向度
著名な経営学者であるピーター・ドラッカーは、成果を上げる習慣の1つは「なされるべきことを考えることである。何をしたいかではない」だとし、「貢献に焦点を合わせる事によって、(中略)成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける」と述べています※1。
結論導出ロジックは省略しますが、『自身の顧客にとってのあるべき姿にフォーカスする事が大事』であると解釈できます。その観点で見ていくと、①②は外向的(利他的)であり、④⑤は内向的(利己的)だと言えます。③は、独立する目的のウェイトをどこに置くかによって変わるでしょう。
強度
既述の距離感や内外向度と相関しますが、目指す未来像と実現手段が思い描かれており、その目的も外向的であれば、「自分がやらねば誰がやる!」といった強い使命感に自ずとつながるため、困難や逆境に立ち向かえる強度を備えた志だと言えます。そして、その志に至った「原体験」もあれば、最強です。
3.自分ならではの『志』を見出そう
創業では初めてな事が多いので、まずは創業する事がゴールで目的になりがちですが、事業を長続きさせる観点で見れば、創業は目的ではなく手段に留まります。よって、創業して何を目指すのか、創業目的を『志』として言語化しておく事は重要です。
しかしながら、創業する時に唯一無二で自身に最適な『志』を見出せるとは限りません。創業して事業展開しながら、年月を掛けて姿・形(表現)が変遷する事もあれば、途中で真の志が見つかる場合もあります。私自身も次なる進化に向けて、新たな志と昨年巡り会いました。
ですので、上記④⑤では決して創業してはいけないという訳ではありませんが、創業はある意味、これまでどういう人生を歩んできたかが大きく影響する行為であり、これからどういう人生を歩むのかという生き様を示す行為でもあります。
創業を目指される皆様が、何のために創業したいのかを考え抜き、困難や逆境に直面しても自身の支えになる自分ならではの『志』を見出される事を祈っております!
※1:P.F.ドラッカー著.上田惇生訳.ドラッカー名著集〈1〉経営者の条件.ダイヤモンド社,2006,p.2-79.
執筆者:髙橋 規尊
ウィンテグラル㈱代表取締役。中小企業診断士。 1on1をメインに1,200人以上の創業支援実績を積み重ね、 資金調達実現額は累計5.5億円を超える。 山積する社会課題と日本の未来を憂い、 勇敢に立ち向かう起業家の支援がライフワークとなっており、 自らも多様な事業に挑戦しながら、製造業経験が活きるハードウェアスタートアップ支援に力を入れている。
製造業からIT・DX業まで多種多様な業種業態に対応する上、一般ビジネス、ベンチャービジネス、ソーシャルビジネス等のビジネスタイプにも横断的に対応。 中でも、衰退先進国である日本の次世代の鍵はスタートアップ・ベンチャーにあると捉え、ドローン、 3Dプリンター、ケミカル、フードテック、デジタルツイン、EdTech、 AI等の多様なスタートアップ・ベンチャーの支援実績も豊富に有している。
開業・法人設立手続きから、創業ステップや課題・解決策の整理、戦略ストーリー重視のビジネスモデル
・事業計画等の策定支援や壁打ち、
資金調達や販路開拓等に至る創業時の様々な課題に対応すると共に、
難度の高い高額融資や競争率の高い東京都創業助成等の採択支援実績も有している。
また、他機関ではCSR評価員や脱炭素経営専門家も兼務している。