大田区産業振興協会

若手人材が「辞めない」組織へ

―  大田区の中小企業が今、考えるべき定着の本質
 「若者と中小企業とのマッチング事業」 ―

採用には成功したはずなのに、入社からわずか3年で辞めてしまう若手社員。
現場は慌ただしく、育成の手も回らない…。

こうした状況は、大手・中小問わず決して珍しくありません。

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」※1では企業規模が小さいほど、入社後3年以内に離職する割合が高いことが示されています。

若手の採用が年々難しくなる中、一人の離職が現場に与える影響は大きく、現場負担増、採用コストの増加、生産性の低下等につながります。若手の定着と、それに伴う技術や技能の伝承は、もはや現場任せの問題ではなく、経営として取り組むべき課題になっています。

では、なぜ若手社員は短期間で辞めてしまう傾向にあるのでしょうか。

制度だけじゃ足りない?辞める理由

働いている方の中には、最近の若手について「すぐに辞めてしまう」「我慢が足りない」と感じている人もいるかもしれません。

しかし、離職の原因を整理すると、個人の性格や意識だけでは説明できないケースが多いことが推測できます。

多くの企業では、社内制度やルールが整備されています。
にもかかわらず、現場では次のような状況が見られることがあります。

つまり、若手が職場に不安を感じる要因として、評価や育成方針の分かりにくさ相談しづらい環境が挙げられています。

さらに、中小企業庁の中小企業白書※2では、人材育成の課題として「指導に充てる時間が確保できない」「育成を担う人材が不足している」ことが繰り返し指摘されています。

相談しづらい職場では、ミスや不安を一人で抱え込みやすくなり、
「今のやり方で合っているのか分からない」「失敗すると評価が下がるのでは…」と感じるうち、挑戦や質問を避けるようになり、成長のイメージを描けなくなってしまいます

こうした小さな違和感の積み重ねが、退職までを考えてしまうきっかけにもなると考えられます。

見える化が定着のカギ

若手が比較的定着している企業には共通点があります。

それは、制度・方針・期待・役割が現場レベルで「見える化」されていることです。

たとえば:

とはいえ、経営者や人事担当者の中には「重要なのは分かるけど、どこから手をつければいいのか分からない」という方も多いのが現実です。

定着の“考え方”を整理する

大田区産業振興協会では、若手が定着する企業に共通する考え方を整理・実践するための 「若者と中小企業とのマッチング事業」 を行っています。

このプログラムは、“定着したくなる環境”をどうつくるかを、経営者・人事担当者の視点で整理することを目的としています。

プログラムで扱う主なテーマ

現場の実情に即して、次のテーマを多角的に取り上げます:

離職という結果のみを見るのではなく、社内環境を「経営者意識・職場環境・マネジメント・採用・若手の本音」に分けて整理することで、改善すべきポイントが明確になります。

プログラムで扱う主なテーマ

プログラムでは、現場の実情に即した解決法を段階的に学び、フィードバックを受けながら実践できます:

Step1:定着率を高める組織づくりセミナー・ワークショップ
Step2:企業の状況を踏まえた個別アドバイス
Step3:若手人材の本音を知る座談会とフィードバック
Step4:学びを整理し、次の行動につなげるフィードバックセミナー

本プログラムでは、知識の習得にとどまらず、自社の課題に即した改善策を検討し、現場で実践できる力を身につけることができます。

そしてプログラムを通じて他社と悩みや事例を共有することで、自社内だけでは気づけなかった視点が得られるのも特長です。

“定着”を経営テーマにした企業の取り組み

本プログラムに参加した企業からは、人材の定着を単なる「現場」の課題ではなく、企業が持続的に事業目的を達成するための「経営」課題として捉える動きが見られました。

ある参加企業では、社員満足度の向上を目指し、年間休日を113日から120日に見直しました。担当者が社長に対し、社員の声や他社事例を踏まえて必要性を提言したことが、経営判断につながりました。

また、月1回の社内サーベイを開始し、社員の意識を継続的に把握する取り組みを始めた企業もあります。小さな不安を早期に捉え、「問題が起きてから対応する」のではなく、「芽のうちに対話する」姿勢へと見直しました。仕事上の課題だけでなく、本人と上司が率直に向き合う機会を設けることで、安心して働ける職場づくりを進めています。

人材定着の取り組みは、一足飛びに成果が出るものではありません。しかし、参加企業では、経営の視点から環境を見直すことで、着実な変化が生まれています。

まとめ

人材の定着に、すぐ効く万能な答えはありません。
しかし、

この整理ができれば、組織は確実に変わり始めます。

本プログラムは、そのためのきっかけです。学んだ内容を自社のやり方に落とし込み、継続して取り組むための視点を提供します。

社員が辞めてから対策するのではなく、「ここで働き続けたい理由」を先につくる
その第一歩として、ぜひ活用してみてください。

プログラム詳細はこちら

参考文献

※1 厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html

※2 中小企業庁 2025年度版 中小企業白書 第2部 新たな時代に挑む中小企業の経営力と成長戦略 第1章 中小企業の経営力 第4節 人材戦略
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b2_1_4.html

※2 中小企業庁 2024年度版 中小企業白書  第2部 経営課題に立ち向かう小規模事業者 第1章 小規模事業者の経営課題と対応 第3節 小規模事業者の人材確保と育成に向けた取組
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/shokibo/b2_1_3.html

※2 中小企業庁 2017年度版 中小企業白書 第2部 中小企業のライフサイクル 第4章 人材不足の克服
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap4_web.pdf

 

 

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