大田区産業振興協会

町工場から生まれるイノベーション拠点― ヤスラボがつくる次世代のものづくり

大田区の町工場から生まれた新しい挑戦拠点ヤスラボ。
スタートアップと町工場が同じ空間で技術とアイデアを交わすことで、開発スピードと創造性を加速させています。前編に続く後編では、2社の協業を支えたこのヤスラボが、医療機器開発の新しいモデルを生み出す場としてどのように機能しているのか、ヤスラボを運営する有限会社安久工機 代表取締役社長 田中氏に伺いました。

「相談できる工場」という新しい形― 実務に深く踏み込む支援

―ヤスラボとは、どんな場所でしょうか。

ヤスラボが目指すのは、単なる施設ではなく、医療機器をはじめとするものづくりの未来を生み出す拠点です。特徴は、ものづくりの実務に深く踏み込んだ支援ができる点にあります。

単に人が集まる場所ではなく、実際に開発を進める場所にしたいと考えています。多くのコワーキングスペースでは、アイデアやビジネスの議論が中心です。しかしハードウェア開発では、実物を見ながら議論しなければ解決できない課題が多くあります。

ヤスラボでは、その場で相談し、試作を見ながら議論し、すぐに改良へつなげられます。
この距離の近さが、開発スピードを大きく変えることにつながります。

スタートアップと町工場が同じ空間にいる意味― 初期段階から伴走する共同開発

―どのように活用されているでしょうか。

現在、ヤスラボではスタートアップと製造企業が同じ空間で開発を進める取り組みが始まっています。アットドウスと安久工機の連携もその好事例です。
特に医療機器などの分野では、スタートアップの技術、町工場の加工技術、開発ノウハウを組み合わせた共同開発が進んでいます。

町工場が単に製造を請け負うのではなく、開発の初期段階から伴走する形で関わっています。同じ空間で開発を進めることで、すぐに相談ができ、実物を見ながら議論できるため、意思決定も迅速に行えるようになります。こうした環境は、ハードウェア開発において非常に大きな意味を持っています。

技術が交差するコミュニティ― 交流が生む新しい挑戦

ヤスラボには、どのような人たちが集まり、どのような交流が生まれているのでしょうか。

ヤスラボには、スタートアップだけでなく、コワーキング利用者やエンジニアも集まり始めています。その結果、施設内では自然と技術相談や共同プロジェクトの進行、新しいアイデアについての議論など、多様な交流が生まれています。

単なる施設運営ではなく、町工場発のイノベーション拠点をつくることが目標です。技術者、企業、スタートアップが交わることで、新しい挑戦やイノベーションが生まれる場。
それがヤスラボの構想です。

医療機器開発を支える拠点へ― アイデアから開発までを一体支援

―特に力を入れている点について教えてください。

ヤスラボが特に力を入れている分野の一つが医療機器開発です。医療機器の開発では、構想設計、試作、開発、製造といった工程が分断されることが多いです。その結果、「設計はできたが試作が進まない」「試作はできたが量産化できない」といった問題が起きやすくなります。ヤスラボでは、これらの工程をつなぎ、アイデアから試作、開発までを一体的に支援できる環境を目指しています。アットドウスと安久工機の協業も、その一つの実例です。

「まずヤスラボに相談する」場所へ― 技術とアイデアが結びつく拠点

― 将来的に、どのような拠点を目指しているのでしょうか。

将来的にヤスラボが目指すのは、「ものづくりや医療機器を開発したいなら、まずヤスラボに相談する」そんな場所です。
技術相談から試作、開発、製造まで、必要な人材と技術が自然に集まり、プロジェクトが動き出します。町工場の技術とスタートアップのアイデアが結びつき、新しい製品や産業が生まれていきます。

町工場から未来をつくる― 技術を次世代へつなぐ挑戦

―最後に今後の展望を教えてください。

日本のものづくりは長い歴史の中で、高度な技術を培ってきました。
しかし現在、町工場の多くは後継者不足や市場の変化など、多くの課題に直面しています。ヤスラボの取り組みは、そうした状況の中で、町工場の技術を次世代へつなぐ挑戦です。スタートアップと町工場が出会い、技術とアイデアが交差し、新しい製品が生まれます。アットドウスと安久工機の協業はまだ始まったばかりです。しかしその先には医療機器開発だけにとどまらない、新しい産業の可能性が広がっています。

そして、その中心にあるのが、大田区の町工場から生まれた拠点――ヤスラボです。

―ありがとうございました。

編集後記

今回、アットドウス株式会社と有限会社安久工機の代表お二人に話を伺い、大田区企業とスタートアップの協業の可能性を改めて実感しました。印象的だったのは、二人とも自社の成長だけでなく、大田区を「ものづくり天国」にし、日本のものづくり全体を成長させたいという思いを持っていたことです。
スタートアップのアイデア・技術力と大田区企業の経験・知見が交わることで、新しい製品や価値が生まれる現場を目の当たりにしました。企業同士の出会いと共創を後押しする場である「PiO PARK」は、イノベーション創出の起点として重要な役割を担っており、今後の一層の活用・活性化が期待されると感じました。この協業の動きが今後さらに広がることを楽しみにしております。

企業情報①

アットドウス株式会社
設立 2017年9月1日
住所 東京都大田区下丸子2-26-13 ヤスラボ1階
ウェブサイト:https://atdose.com/

企業情報②

有限会社安久工機
設立 1969年8月
住所 本社   〒146-0092 東京都大田区下丸子2-25-4
   ヤスラボ 〒146-0092 東京都大田区下丸子2-26-13
ウェブサイト:https://www.yasuhisa.co.jp/

 

 

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