大田区産業振興協会

事業承継・M&Aで加速する老舗企業の変革
前編 事業承継から見える未来

1957年にアルミニウム材料問屋として創業し、アルミ及びその他非鉄金属の加工、販売を行っているニッカル商工株式会社。事業承継やM&Aを経験し、事業をアップデートしています。変革の背景や取り組みについて、代表取締役社長の松下氏にお話しを伺いました。前編では、事業承継にまつわる経緯などについてご紹介します。

ニッカル商工株式会社 代表取締役社長 松下氏(写真中央)

―事業承継された経緯について教えてください。

祖父が創業した会社を将来継ぐという意識は、幼い頃から自分の中に根付いていました。しかし、すぐに家業へ入るのではなく、まずは一般企業に就職し、約2年間、一般社員として社会人経験を積みました。その後、先代である父から声をかけられ、家業に参画することになりました。

仕事を続けていく中で、先代社長との間には、激しい意見の対立が待ち受けていました。経営トップの意向がすべてに優先される企業風土であり、経験や勘に基づいた経営スタイルをとる先代とは、たびたび意見が対立する場面もありました。会社の将来を見据えたとき、現状の経営のままでは持続が難しく、いずれは社員にも大きな影響が及ぶと危機感を抱きました。それを機に自ら事業を引き継ぐことを申し出ましたが、先代がその意志を示すことはありませんでした。そこで、大田区産業振興協会にご相談させていただき、結果として事業承継センターへとつないでいただきました。

―事業承継センターの支援について教えてください。

事業承継センター担当者には、先代への説明や説得までお力添えいただきました。時間を問わず、常に寄り添う姿勢でご対応くださり、大変心強い存在でした。そのお陰で事業承継に強く抵抗していた先代が、最終的に受け入れてくれるまでに至りました。

さらに計画書の作成から実行にいたるまであらゆるサポートを受けることができました。当初半年程度を見込んでいた事業引継ぎ支援のサービスは、約1年かかり、ようやく完了することができました。事業承継の難しさを改めて実感する一方で、ご支援いただいた皆様には深く感謝しております。

―事業承継で会社はどう変わりましたか。

物をなかなか手放せない先代とは異なり、私は不要なものは速やかに処分する方針を持っているため、積極的に社内を整理しました。その結果、以前は倉庫として使われていた空間が、議論や打ち合わせに活用される会議室へと変わりました。さらに、感覚に頼っていた経営方針を見直し、論理的な計画策定と確実な実践を軸とした経営スタイルに変革し、経営トップの判断が最優先される風土から、社員間の議論で生まれた意見を取り入れ、実行に移す企業文化へと変わりました。

また、経営を常にアップデートするためにも、社員教育に注力し、社員一人ひとりの知的水準の向上にも力を入れています。 自らが率いる組織を、自律的に考え行動できるプロフェッショナルの集団へと育成することに全力を尽くすことが重要だと考えながら日々、取り組んでいます。

―これから事業承継をする方に向けて、アドバイスやメッセージがあれば教えてください。

事業承継は、できるだけ早い段階から取り組むことが大切だと思います。私の経験からも、70代・80代の経営者にとって、経営のやり方や考え方をアップデートするのは簡単なことではありません。古い価値観のままだと、現代のビジネス環境に対応しきれず、会社の成長が停滞してしまう場面も出てくると思います。

後継者となる立場の人間が決まっている場合であれば、「自分が承継したい」という意志を早い時期にしっかり伝えることが重要です。その一言が、会社の将来を動かすきっかけになると思います。

また、事業承継は決して一人で抱え込むべきものではなく、外部のサポートを積極的に活用することも大切です。私自身も、大田区産業振興協会のビジネスサポートに相談し、「事業承継センター」を紹介してもらえたことが大きな転機となりました。専門家の伴走支援のおかげで、前向きに事業承継を進めることができました。

事業承継は決して簡単ではありませんが、早めの準備と周囲の力を借りることで、確実に前へ進むことができます。これから取り組まれる方にも、ぜひ前向きな気持ちで一歩を踏み出してほしいです。

以上、前編では、事業承継を契機として取り組まれた改革などについて伺いました。
後編では、M&Aによってもたらされた変化などについてお話をお聞きします。

企業情報

ニッカル商工株式会社
設立:1989年3月
住所:東京都品川区南大井3丁目24番5号
ウェブサイト:https://nikkal.net/

 

 

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