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後編 現場の課題から見えた生き残り戦略
前編では『事業承継』についてニッカル商工株式会社 代表取締役社長の松下氏にお話をお伺いしました。後編はM&Aへの決意と、企業の未来を見据えた人材育成の取り組みについてご紹介します。

―M&Aに踏み切った経緯を教えてください。
近年では、経験豊富な人材に加え、経験の浅い社員の採用も進んでおり、企業全体としてさらなるレベルアップを図る必要があります。こうした中で、企業としての持続的成長と競争力の強化を目指すには、商社機能に加えて自社での製造機能を持つ体制が不可欠であると判断し、M&Aの検討を開始するに至りました。
社長自らの目の届く範囲にあり、その企業の社員を幸せにできること、シナジーが期待できること、そして後継者不在といった条件を踏まえ、M&Aの相手先を模索することにしました。多くの協力先にご相談させていただく中で、最終的にご縁をいただいたのが、株式会社進和精機でした。これは投機的な判断ではなく、将来の可能性に対する戦略的な投資と考え、決断しました。
―M&Aがもたらした効果を教えてください。
何より、自社で設計から製品化まで手がけられる体制が整ったことで、企業としての事業領域が大きく広がりました。これにより、自社製品を持つ強みを活かし、『大田区加工技術展示商談会』『テクノフロンティア2025』などの展示会への出展にもつながりました。
大田区産業振興協会が主催する会員制勉強会『自社商品の作り方勉強会』や『ベンチャーフレンドリー塾』などにも参加するようになり、企業としての視野と活動の幅がさらに広がりつつあります。今では大田区の製造業に仲間入りしたという実感を持っています。
―M&Aにより組織目標を達成するため、営業力強化、社員のモチベーション向上にも寄与していますね。
展示会への継続的な出展を通じて、効果的な運営方法が徐々に明確になってきました。事前の告知や広報活動に加え、当日は十分な人員を配置して積極的に営業を行い、展示会後のフォローアップにも力を入れています。また、Web広告も活用しており、費用対効果の高い効率的な運用が実現しています。すべてのフォローが成果につながるわけではありませんが、スピード感を持って幅広くお客様にアプローチすることが、新たな取引のきっかけを生む第一歩になります。また、参加する社員の意識も着実に高まり、展示会に出展できる企業であることへの誇りを持って営業活動に取り組んでいます。出展を重ねるごとに、その効果も着実に大きくなっています。
その他にも、社員が同じ目標に向かって進むために、「経営計画書」を作成しております。企業としてのあるべき姿を明確に定め、全員が共通の方向性を持って業務に取り組めるよう体制を整えています。また、「経営計画書」の浸透を図るための説明会も定期的に実施しております。これらの取り組みはすべて、お客様第一の精神を貫くとともに、社員が働きやすい環境づくりを実現するためのものです。
さらに、社員一人ひとりの知識・スキルの向上にも力を入れております。具体例として、昇格の条件に日経テストのスコアを設定し、管理職層に対しては600点以上の取得を必須としています。顧客と対等にコミュニケーションができる一流のビジネスパーソンを目指し、日々努力を重ねております。

―将来の展望を教えてください。
今後は国内市場にとどまらず、海外市場への展開も視野に入れて取り組んでまいります。海外のお客様からもご注文をいただけるような販路や仕組みづくりにも力を入れていきたいと考えています。
契約や物流といった多岐にわたる課題が想定されますが、事業承継やM&Aの際と同様に、すべてを社内で抱え込まず、外部の専門的な支援を積極的に活用しながら取り組んでいきたいです。
松下社長は、変化の激しい時代に対応するため、経営者として常に課題解決に取り組んできました。その原動力は、成長するための学びの姿勢と行動力になります。
ターニングポイントである事業承継やM&Aといった重要な局面においても、専門家のアドバイスを得ながら着実に取り組んできました。変化を恐れず、挑戦する力を持ち、「ものづくりは人づくり」を実践する同社の取り組みに今後も注視していきます。
ニッカル商工株式会社
設立:1989年3月
住所:東京都品川区南大井3丁目24番5号
ウェブサイト:https://nikkal.net/
