大田区産業振興協会

~イランから日本へ、そして次世代へ~
大田の町工場に息づく技術の絆

株式会社マゲトップは、オリジナルの金型や機械を使用して、複雑な曲げ加工を行う高度な技術力を誇る会社です。難易度の高い曲げ加工や特殊素材の曲げ加工を実現しています。会社の代表者はイランから日本に帰化した代表取締役社長 吉川アマド氏です。30年前に来日し、10年前に同社を設立しました。今般、ご子息のソヘイル氏へ事業承継の準備を開始したということで、これまでの経緯や現状や承継について、社長とソヘイル氏にお話しを伺いました。


株式会社マゲトップ
代表取締役社長 吉川アマド氏(写真左)吉川ソヘイル氏(写真右)

社長に伺います。創業までの経緯について教えてください。

18歳から母国イランの金型専門学校に通い、その後10年程働いて技術を身に着けてから日本に来ました。来日後、金型職人を探している方にお会いしました。最初は私の技術や知識を疑っていましたが、現場で使用している機械の機能等を私が理解できると知って驚いていました。続いて、ある製品の加工の解決策について尋ねられ回答すると、その方は喜んで、自分の会社の社長を紹介してくれました。

私はそのようなご縁から紹介いただいた会社に就職しました。勤続して20年程経ったある日、信頼していたその方が退職することを聞きました。それを契機に私も退職し、独立して現在の株式会社マゲトップの創業に至りました。

創業から今まで、多くの苦労がありましたが後悔していません。創業にあたり、区内の様々な企業から、外国人の自分が独立して仕事を続けていくことに対し応援してくださいました。大田区は、外国人の私でも住みやすいですし、仕事もしやすいまちです。

貴社の現況についてお聞かせください。

金型を使った難易度の高い曲げ加工を主に請け負っています。社内のベンダー(曲げる機械)の中には、自社製のものもあります。そのため工場見学はお断りしています。できないような加工をどうやったらできるのか毎日工夫しています。ただし私たちの加工分野ではない、切削、メッキ、ネジの調達など必要な場合は、「大田区町工場の仲間回し」を活用して区内の工場に外注しています。30年前から大田区で仕事をしておりますが、周りの工場がかなり減ってきているのが残念です。

現在、弊社はおかげさまで多くの企業と取引させていただいています。日本有数の大手企業からの依頼もあります。海外取引については、ビッグサイトの展示会がきっかけで、韓国の企業からの依頼がありました。その他、ホームページからのお問い合わせも多いです。

高難度の曲げ加工を得意とする貴社への発注依頼は多いと思われますが、そのための人材確保はどのように行っていますか。

人は欲しいけど、なかなか入って来ません。色々な専門学校等に訪問し探してはいますが、多くの方々は、大きな会社を選ばれてしまいます。

現状、教える時間があまりないため、基本的な技術がある人材を求めています。
母国出身者の採用も考えていますが、職場では業務時間中に母国語(ペルシャ語)を話さないルールにしているため、その点がハードルになっていることもあります。
日本で長く働き続けてくれる人を見つけるのは、なかなか難しい状況です。

事業承継についてお二人にお伺いします。
社長は現在62歳で、65歳までに事業承継をする予定とのことです。ご子息のソヘイル氏は25歳ですが、事業承継を早期に行おうと思ったのはなぜですか。

(社長)
私が今のうちに引退すれば次期社長が若くても、困った時に相談に乗ったり一緒に考えたりすることができると思ったからです。自分が動けなくなってからでは次期社長を助けられないと思ったからです。

(ソヘイル)
社長から事業承継を頼まれたことはありません。社長に万が一のことがあったとしても困らないように、会社の会議で早めに承継の準備を進めていこうということになりました。見積もりの方法や展示会出展など、少しずつ色々なことを学んでいます。

社長は仕事をすることが楽しくて、従業員が定時で帰った後も、一人で遅くまで仕事をしていたそうですが、ソヘイル氏は、ものづくりの仕事をどう思っているのですか。

(ソヘイル)
最近は、図面を見て、難しいものを造ったりすると、できた時の達成感が得られるようになってきています。最初のころは正直、楽しくありませんでした。時間が早く過ぎないか時計ばかり見ていました。今は時間の経つのが早いと思うほど楽しくなっています。

経営者として、必ず継承すべきこと、変えてほしいことを教えてください。

(社長)
経営者として、社員みんなに自由に、かつ責任をもって仕事をしてもらいたいため、いちいち口を出さないようにしています。自分のやり方が良いか悪いかはわかりませんが、次期社長にも自由にやって欲しいと考えています。

社長になることへの不安はありますか。

(ソヘイル)
もし、今の社長に事故があったらどうしようか、従業員を抱え売上をどう維持しようかというような不安はあります。それでも会社を引き継いで頑張っていこうと思っています。この2、3年の間、社長やアドバイザーの方々などから経営者としての部分や仕事の面で多くのことを教えていただいております。皆さんのお力をお借りしつつ学んでいきたいと思います。

どんな会社にしていきたいですか。

(ソヘイル)
将来は会社の規模を大きくし、仕事も従業員も増やせたらいいなと思っています。実現できるように、経営についても仕事についても日々学び、努力していくつもりです。

編集後記

社長が帰化される際には、近隣50社から署名をいただいたとのこと。社長の技術力や人間性が、区内の多くの方に信頼されていたことがうかがえます。
従業員採用にはご苦労されているようですが、現在の従業員はイラン人と日本人と半々で、女性も4人就業しておりバランスの取れた構成になっています。社長及び従業員の皆さんで力を合わせ、秀逸の技術を引き継いでいただければと、他の大田区内企業の方たちも切に願っています。

企業情報

株式会社マゲトップ
設立:2016年12月
住所:東京都大田区矢口2-31-20
ウェブサイト:https://mage-top.com/?lang=ja

 

 

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