大田区産業振興協会

【医工連携】想いをつなぎ、命を救う。心臓マッサージ教材「ドックン2」に込めた、東邦大学と大田区の絆

心臓突然死から命を救うために欠かせない心臓マッサージ。その技術を可視化する教材『ドックン』が、大田区の技術力によって進化を遂げました。開発に携わった東邦大学の担当者に、製品化への道のりを聞きました。

「正しく押せているか」を水の動きで可視化する

「AEDの普及は進んでいますが、実はAEDが届くまでの間に実施する心臓マッサージ(胸骨圧迫)こそが救命率を左右します。しかし、適切な『強さ』と『速さ』を実感するのは難しい。そこで開発したのが、空気ポンプで水を動かし、マッサージの効果を目で見えるようにした『ドックン』でした」

初代モデルは2017年に誕生。教育現場で高い評価を得ましたが、予期せぬ困難が立ちはだかります。コロナ禍による講習中止、そして製造元企業の撤退。一時は供給が完全にストップする危機に陥りました。

 運命を変えたのは、担当者同士の「雑談」だった

「在庫が底を突き、このままでは救命教育の火が消えてしまう……。そんな絶望的な状況の中、救いとなったのは日頃から築いていた大田区産業振興協会さんとの繋がりでした」

実は、最初から「開発」の相談をしたわけではありませんでした。大田区産業振興協会とは定期的な打合せを行っております。ある日の打合せの「実は製造元がなくなって困っているんです」という何気ない雑談がきっかけでした。
「その一言を協会の方が拾い上げてくださり、『それなら良い企業を知っていますよ』と、即座にメディカルテック株式会社さんとのマッチングが実現したのです。フォーマルな会議だけでは生まれなかった、地域のネットワークが生んだ奇跡だと感じています」

 大田区の「提案力」と「現場知」が難題をスピーディーに解決

共同開発パートナーとなったメディカルテック社との作業は、驚きの連続でした。最大の課題は、心臓マッサージ特有の「約30kgの荷重」に耐えうる頑丈さと、量産コストの両立でした。

「大学側が当初考えていたのは、専用の金型を起こす高コストな手法でした。しかし、大田区の職人さんは『わざわざ金型を作らなくても、もっと良い方法がある』と提案してくれたのです。それが、汎用的な『水道管の素材』を構造体に活用するという驚きのアイデアでした」

さらに驚かされたのは、その開発スピードです。設計図を渡して待つ「指示型」ではなく、月1回の定例会で出たアイデアを即座に形にする「双方向型」の体制が取られました。
「『ここをもう少しこうしたい』と伝えれば、次回の会議にはもう形になっている。胸の厚みを再現するスポンジの積層構造や、心臓位置のマークなど、細かな改良が同時並行で進みました。この町工場ならではの機動力と柔軟な発想があったからこそ、異例の短期間で製品化まで漕ぎ着けることができたのです」

大田区から世界へ、救命の輪を広げたい

苦難を乗り越え完成した『ドックン2』は、本年4月からいよいよ販売が開始される予定です。
「質の高い心臓マッサージが広まれば、救える命が必ず増えます。今後は国内だけでなく、海外の教育現場にもこの『大田区生まれ』の技術を届けていきたいですね」

東邦大学は今後も大田区産業振興協会と連携し、ものづくりだけでなく人材育成の面でも地域に貢献していく構えです。「命を救う技術」は、大学の知と地域の技が結びつくことで、さらなる未来へと走り出しています。

▽連携先企業紹介

メディカルテック株式会社
住所:東京都大田区大森西1-19-16
電話:03-3762-6204

 

 

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