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新たな時代を切り拓く—事業承継の覚悟
株式会社マテリアルの細貝龍之介新社長に聞く

 宇宙や防衛産業など、多分野の精密部品加工を手掛ける株式会社マテリアル(大田区南六郷)。2026年7月、その二代目社長に細貝龍之介氏が就任した。同社はこれまで、大田区内の中小製造業が結集して国産そりを開発・製作するプロジェクト『下町ボブスレー』を筆頭に、ものづくり業界の〝連携〟において存在感を放ってきた。それだけに、新体制のかじ取りに業界内外から注目が集まっている。「これまで脈々と続いてきたものづくりの歴史を、これからもつないでいかなければならない」。そう覚悟を示す細貝新社長に、事業承継に至るまでの過程と今後の経営の方向性を聞いた。

細貝新社長

事業承継のカギは親子間の信頼

 大学卒業後、不動産の営業マンとして活躍してきた細貝氏は2016年、マテリアルに入社。製造や経理など幅広い業務を経験した後、営業部門を率いてきた。先代社長の父・細貝淳一氏から『会社の承継』を示唆されたのは、入社6年目の2021年。『会社を売却するかお前に継がせるかはまだ決めていない』と告げられた一方で、この年に役員に就任し、2023年には副社長に就いていた。「最後まで父に会社を継ぎたいとは言わなかった。流れに身を任せていた」と振り返るが、社長就任を見据えた準備は着実に進めていた。

 こうした取り組みを続けながら、2026年7月、社長に就任。その数か月前には、事業承継を決定づけた出来事がある。「父も私も親子で言葉を交わすのが苦手」と照れ笑いを浮かべながら、「父から直接『継いでほしい』と告げられることはなかった。正式に社長就任を受け止めるきっかけとなったのは、就任数か月前に二人で近隣企業を訪問した際のことだ。父の『息子が7月から代表になりますのでよろしくお願いします』という一言が、後継者としての覚悟を固める瞬間となった」という。

親子の間に確かな信頼関係があったからこそ実現した事業承継の一例と言えるだろう。

チーム力強化で個の力を最大化

 細貝新社長はその信頼に応えるように、就任後、早くも〝改革〟へと乗り出した。その一つが「責任と権限の明確化」だ。社内に役職制とチーム制を導入し、誰がどの責任を担うのかを可視化。その効果は既に出始めており、「例えば課長になった技術者は、各技術者の作業時間や仕事内容を意識的に把握するようになった。さらに、稼働していない機械があれば、『そこへ人員を配置できるのではないか』と、社員が自ら考え、行動する風土が生まれた」と述べる。

 売り上げの増加を目指すためには、チーム力を高め、「個の力」を最大限発揮できる環境を整えることが欠かせないと感じたからこそ、このような取り組みを実施したのだ。

工場内
加工例

 このほか重点施策として、「地域との交流」も挙げられる。細貝新社長は創業当初に触れ、「当社は、工具すら満足にそろわない状態から始まった。創業当時、父は工具一本さえ手元になく、隣の工場から借りていたそうだ。地域の皆さんの支えがあったからこそ、今がある」と指摘。そうした原点に立ち返り、「改めて地域との交流を大切にしていきたい」と強調する。地元の祭りへの参加や小学生の職場体験の受け入れなど、地域との接点を増やし、〝地域に開かれた会社〟にすることは、「未来の担い手の確保につながる」とも。

 細貝新社長は区内の小学校で出前講座を続けており、「地道な取り組みだとしても、将来につながっていくはずだ。若い世代に魅力を知ってもらい、それをまた次の世代に伝えていってもらえれば、ものづくり企業はなくならない」と気を引き締める。「ものづくりという仕事が、子どもたちの『なりたい職業』の上位に入る未来をつくりたい」と話す表情には、未来への強い覚悟がにじむ。

 ものづくりの魅力発信や、さらなる魅力向上のためには、先代が注力してきた〝企業間連携〟も不可欠だ。だからこそ、「今後はこれまで以上にさまざまな企業と連携し、ものづくりに携わる企業が一丸となって、明るい未来をつくっていきたい」と力を込める。

 最後に将来の目標を聞くと、「夢は区内に新工場を整備すること。現在三つに分かれている工場を一つに集約できるよう、精一杯頑張っていく」と前を向く。

企業情報

会社名:株式会社マテリアル
設立:1992年7月
住所:東京都大田区南六郷3-22-11
HP:https://www.material-web.net/

 

 

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