仕事を通して、人間らしくなる

大田区の中でも東側、川を挟んですぐ羽田空港の区域になる東糀谷(ひがしこうじや)地域。大きめの建物や工場などが並んでいます。その中にある「OTAテクノCORE(おおたテクノコア)」は、ものづくり企業の集積施設として2012年に開設した工場アパート。4階建ての建物には製造現場に適した約100㎡~200㎡の部屋が33ユニットあります。 その「OTAテクノCORE」1階で操業しているのが「株式会社クライム・ワークス」。 「ものづくりの総合支援パートナー」として活躍している同社の山口代表に、その競争力の源泉である人材の採用・育成についてお聞きしました。

株式会社クライム・ワークス 代表取締役社長 山口 誠二 氏

ものづくりの「総合支援パートナー」

─まずは、クライム・ワークスさんの企業概要や技術について教えていただけますか。

当社は1990年に創業しました。10坪、2人ではじめた町工場で、創業当初は大田区の別の工場から色々な仕事を回してもらっていました。いわゆる孫請け、ひ孫請けの仕事です。

その中で「試作品」の仕事を受けることが多かったものですから、試作を中心にやっていく方針を打ち出しました。

そのうちにメーカーとの直接取引も行うようになり、試作におけるさまざまな相談に対応していくと、世の中のものづくりのトレンドが見えるようになりました。はじめは金属製品の試作を行っていましたが、プラスチック製品の試作や金型、成型など、市場のニーズを感じ取り、それに合わせて人材採用や機械の導入を進めていき、現在では社員数80名を超える規模まで成長することができました。

私自身は金属加工の出身でしたので、他の要素技術、金型や成型、3Dプリンターなどについての知見は足りない部分もありました。しかし、運よく人に恵まれ、その時々に必要な知識・技術を持った社員との出会いがあり、彼らが一緒になって汗を流してくれたおかげで、規模・技術ともに成長することができたと思っています。


同社が手がける製品例

─2020年に長崎に工場を新設されましたね。長崎工場(長崎テクニカルセンター)はどのような役割になりますか。

当社がこれまで請け負ってきた「開発試作」はメーカーが開発を終えるまでが仕事ですが、その後に「量産開発」が始まります。我々はこれまで量産開発の支援は行ってきませんでした。なぜなら量産する体制が整ってなかったため、できる支援にも限界があったからです。

ものづくりの入口から出口までを支援するうえで、量産を支援することは欠かせません。「ものづくりの総合支援パートナー」を標榜する当社の中で、量産の部分を担う役割として、長崎工場を新設しました。

採用と育成について ~技術の階段をつくる~

─さきほど、御社の成長の中で知識・技術を持っている社員の方が大きな力を発揮したと仰っていましたが、採用・育成についてはどのような方針をお持ちですか。

今は技術の「継承」が重要だと思っています。

振り返ってみると、当社の社員は技術に優れた者ばかりなのですが、その分、個人の力に頼ってきた面がありました。例えば、ある社員が突然当社を辞めたとしたら、その後を担える人材が他にいないという状況でした。

そのような状況は企業として大きなリスクになりますので、技術を伝えていくための「階段」をつくる必要性を感じていました。ベテランから中堅、若手、新人まで求められる能力・技術がなだらかにつながることで、組織として成長していけると考えています。

その取り組みの一つとして、10年程前から新卒採用をはじめました。

大手の採用サイトや採用イベントへの参加をはじめ、1年通して、採用担当が学校訪問や説明会を実施しています。新卒採用には時間もお金もかかりますが、さきほど申し上げた「技術の階段」を実現していくうえで、優秀な新人に定期的に入社してもらうことは重要だと考えています。

採用だけでなく、長く働き続けてもらうための取り組みも行っています。社宅や家賃補助、保養所といった福利厚生も整えてきましたし、長崎の方にも社宅を準備しているところです。

今は少子化で人材が希少になっていく世の中です。働き口が多くある中、当社は「選ばれる会社」にならないといけません。

求められる「人間らしさ」

─社員の育成はどのようにして行っていますか?

当社では1年目の新人は「研修生」と呼んでいます。1年目に2~3の部署を経験してもらい、本人の適正と希望を元に2年目からの所属を決めます。

研修はOJTや内部研修だけでなく、外部の研修も活用しながら必要な知識・技術を身に付けてもらいます。ただ、当社の業務は一朝一夕でこなせるものではありません。社員の教育や成長もある程度のスパンで考えています。

たとえば、切削加工でしたら、工程の設計、工作機械のプログラム作成、実際に機械を動かすオペレーションといった流れがあります。これらを5年で一人でできるようになるイメージです。そして、10年程度でリーダーとして、新人を教育できるような能力・人間性を持った社員に育って欲しいと考えています。

─即戦力、というよりは長期的な視点での成長に期待されているという印象です。では、御社ではどのような人材を求めていますか。

当社には「仕事を通して人間らしくなろう」という企業文化があるんですね。

どんな組織にもそれぞれの理念や文化があると思います。当社で働く人間にも、クライム・ワークスのバリュー・企業文化に賛同して欲しいと思っています。

大半の人にとって、生活のために働くのは当たり前のことです。しかし、仕事は限られた人生の中で何十年という期間、相応の時間を捧げるもの。その時間の中に喜びや充実がないのはつらいことです。

仕事は楽しいことばかりではありませんし、苦労や困難は多くあります。ただ、そこで生活のためだけ、お金のためだけに働いていると、人生や人間性は瘦せ細っていきます。

自身の仕事の中に面白味ややりがい、挑戦することの楽しさを見出していく。そして、仕事を通しての成長に喜びを感じ、自分自身や周囲を豊かにしていく。「人間らしさ」はそういった時間と経験の積み重ねの中から生まれるものだと思います。

─バリューや企業文化が第一に来るのですね。御社の社員さんや社風はどのような雰囲気なのでしょうか。

「真面目な子」が多いですね。もしかしたら私の前だけかもしれませんが(笑)。そして勤勉だなと感じます。

 

 

 

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