答えを持ってる "ゼネラリストエンジニア"

新しいアイデアを持ったベンチャー企業や新製品を企画している大手企業、ものづくりのための企業ネットワーク構築やそのマネジメント、産学連携による技術開発、資金調達が必要な創業者など、ビジネス上の課題や困りごとを持っている企業はたくさんあります。そんな時に確かな技術や深い知見、なによりも前向きに相談に乗ってくれる人がいてくれたら、これほど心強いことはありません。 大田区にはそれを叶えてくれる頼もしい企業があります。

MTK株式会社 代表取締役 松江登久 氏

千葉工業大学 工学部 金属工学科 卒
プライベートでは小学生を対象にした「子供科学工作教室」をボランティアで約20年間で20回開催。千葉県知事から感謝状をもらう。週末は釣りやアウトドアでリラックスした時間を過ごしている。

多様なキャリアが創業を選択させた

京急雑色駅から徒歩約10分。大田区が擁する創業支援施設「六郷BASE」のオフィスに入居するMTK株式会社を訪問しました。対応していただいたのは代表取締役の松江登久さんと技術担当の髙木さん。

─本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは松江さんの経歴と創業の経緯などを教えてください。

大学を卒業した後、理化学研究機器のメーカーで技術営業職としてキャリアをスタートしました。6年程そこに勤めた頃、当時は国の後押しもあってベンチャー企業の創業が流行っていて、どんどん増えていく時代でした。今考えると若気の至りとも言えますが、自分もベンチャーをやってみようと考え、理化学機器の研究開発型のベンチャー企業を立ち上げました。

その後、国の事業でプロジェクトマネジャーをはじめビジネススクールに通ったり、大学とプロジェクトマネジメントに関する共同研究を行ったり、ベンチャー企業の立ち上げ支援などを行い、直近の仕事はファブレス型のベンチャー企業で新事業としての商品開発をやっていました。

そこでは主に半導体設備関連の商品開発業務を行っていましたが、コロナ禍となり、コロナ対応の製品開発に補助金を活用して着手しました。しかし、製品化・販売目前の所までいきましたが、経営者が急逝してしまい会社自体が解散することになりました。

さて、どうするかと考えた時に、今までの知見を活かしてあらためて創業をしようと2022年9月にMTK株式会社を設立しました。同席している髙木は前職の同僚で、一緒にやるか、ということで創業メンバーに入ってもらいました。

「創業」というと強い使命感や大きな決断が背景にあるイメージですが、じつはそうでなく、ある種、流れの中での創業です。

悩みを聞く、解決策をつくる、解決する

─それでは、御社の事業や技術について教えていただけますか。

事業は1点ものの製品・装置などの設計・製作から、アイデア段階からのコンサルティング、プロジェクト全体のマネジメントや資金調達まで、幅広く手掛けています。事業領域にはメンタルヘルスのマネジメントサービスも据えています。

─幅広いですね。
御社のホームページでは「ゼネラリストエンジニアがトータルにマネジメントする」という言葉があります。「ゼネラリストエンジニア」という言葉はあまり聞いたことがないのですが、どのような意味が込められていますか。

これは最初に勤めた会社の社長から教わったことなのですが、「一つひとつの技術の専門家になる必要はない。お客の悩みを知り、それを解決できる幅広い知見を持っていろ」という言葉に影響を受けています。

「ゼネラリストエンジニア」という言葉、昔は時折見聞きしていた言葉ですが、最近は聞きませんね。私はあらためて定着させたいなと考えています。つくることや課題解決に必要な情報・知見を幅広く持っていること。そしてそれを活用して物事を解決・実現するエンジニア、というような意味になります。

─具体的な例などで教えていただけますか。

たとえば、当社がつくった製品のひとつに、海水中の放射性物質を測定するために必要な前処理をする装置があります。この装置の構造や使われている技術自体は目新しいものはありません。知識がある人が装置を見れば、どんな技術をどう使っているのかはすぐに分かると思います。一方で、クライアントの要望から、この装置の形をつくりあげるのは簡単なことではありません。機械設計・電気設計、製造の技術、コスト・スケジュールの管理まで広範な知見がなければつくりあげられないものです。

クライアントと会話しながら、最終的なアウトプットが浮かんでくる。そして、実際に形にするまでマネジメントできる。これが当社の強みであると考えています。

もちろん、私がすべての技術・知見を持ち合わせているわけではありません。たとえば金型や樹脂成型についての知見は少ないですが、同席している髙木はそれらのプロフェッショナルです。

─髙木さんはどのようなキャリア・経験をお持ちですか?

私はもともと金型屋の出身なんですが、その他に重工業メーカー、自動車のプレス関係、カーナビの設計、中国のデジカメ製造現場での指導など幅広く経験してきました。なので製造現場だけでなく、受注側と発注側、両方の事情が分かります。この両方の間に立って話をできる人材は思いのほか少なく、時には設計と現場の間に入って通訳のような役割を求められたこともあります。

両方の知見があると、たとえば新製品を開発しようとした時にプロジェクトの大枠のスケジュールを引ける、製品に必要な部品を準備する手順が分かります。こういったスキル・知見は幅広い場面で役に立つし、さまざまなクライアントのサポートをしていける存在かなと考えています。

─お二人ともそれぞれの得意分野がありつつも、ゼネラリストエンジニアとしての幅広さがあるわけですね。

大田区にあれば、製造現場を持つ必要がない

─創業の地として大田区の「六郷BASE」を選んだのはなぜですか?

創業にあたって、これまでの経験上まずはインキュベーション施設を活用しようと考えていました。色々探した中で見つけたのが「六郷BASE」です。理由を正直に言うと、まず家賃が安かった(笑)。事業を運営していく中で家賃は大きなコストになるので、そこを抑えていくというのは自然な選択でした。

大田区で創業することのメリットはむしろ入居してから実感しました。「ものづくりのまち」だということは以前から知っていましたが、本当に歩いていける距離に工場がたくさんあって、そのいずれも技術レベルが高い。当社は機器の開発・製造・販売も行っていますが、製造は大田区内だけで全部できてしまいます。

当社は今ファブレスメーカーという側面もありますが、その形を選んでいるのも大田区であれば自社で工場を持つ必要がない、という理由もあります。

暗中模索に「明かりを灯す」ような存在に

─事業の可能性、発展性がとても幅広いと感じます。今後はどのような展開を考えていますか。

顧問契約やコンサルティングで利益をあげていくことに加え、製造のコーディネーターや自社の製品も開発して事業を進めてくことが考えられます。加えて、ベンチャーやスタートアップ企業の支援にも力を入れていこうと思っています。今、ベンチャー・スタートアップの界隈は活況ですが、一方で危なっかしく見える企業も多くある。私自身、ベンチャーの立ち上げからクローズまでの経験がありますので、「暗中模索」の状態にある企業に、明かりを灯してあげるような役割を担えると考えています。

一般的には「選択と集中」という考え方もあると思いますが、それはまだ早いと思っていまして。今は、市場や社会が求めているもの、我々が求められているものを見定めながら進んで行く時期なので、幅広い視野で来る者は拒まずに身構え、「選択と集中」はその結果、自然と起きると考えています。

企業情報

MTK株式会社
設立:2022年9月
住所:大田区南六郷3-10-16 六郷BASE 305号
ウェブサイト:http://www.office-mtk.tokyo

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