ここ数年、「持続可能な経営」「地域とともに成長する」といった言葉が、企業だけでなく個店や中小事業者の間でも聞かれるようになりました。環境への配慮やSDGsへの関心が高まる一方で、実際の現場では「日々の売上を立てることに精一杯で、そこまで手が回らない」と感じる店主さんも多いのが実情です。
しかし、私たちあきない活性化コーディネーターが区内事業者様を訪問して感じるのは、「地域とのつながりを活かした商品づくり」こそ、結果的に「持続可能な商い」につながるということです。つまり、無理をして新しいことを始めるのではなく、すでに身の回りにある地域資源や人のつながりを再発見し、商品やサービスにどう活かすかという視点が重要です。
地域内でのコラボ
大田区内には、昔ながらの製法を守る豆腐店や町工場、地域密着のカフェやベーカリーなど、地域に根差した小規模事業者が数多くあります。こうしたお店が、近隣の生産者や異業種とコラボして新たな価値を生み出す例が増えています。
例えば、地元野菜を使った惣菜、町工場の技術を応用した生活雑貨、地域イベント限定のオリジナル商品など。こうした取り組みは単に「新商品づくり」ではなく、「地域のストーリーを商品に込める」試みでもあります。
「どこで買っても同じ」ではなく、「この地域だから」「この店だから」と選ばれる理由をつくること。それこそが、価格競争から脱し、ファンを育てる第一歩になります。実際に支援の現場では、「地元との協働をきっかけに、リピート客が増えた」「地元メディアに取り上げられ、販路が広がった」という声も少なくありません。
お客様とともに育てる商い
もう一つ注目したいのは、お客様と共につくる視点です。SNSでの意見募集や試作品のアンケート、クラウドファンディングを通じた共創など、顧客を開発プロセスに巻き込む方法は年々多様化しています。これにより、「売り手と買い手」という一方向の関係から、「応援者として一緒に育てる」関係へと変化しつつあります。
特に地域商店にとって、「お客様は顔見知りである」という点は大きな強みです。お客様の声を直接聞き、柔軟に反映できるのは、大企業にはないスピードと温かみのある競争力です。小さな試みでも「お客様と一緒に商品を考えてみる」ことから、新しいつながりやリピート動線が生まれます。
持続可能な商いとは、単に「長く続けること」ではなく、地域・人・環境の循環の中で、ともに育っていく商いです。地域の素材を使う、再利用可能な包装に変える、障がい者施設の製品を仕入れる――。
そんな一つひとつの選択が、地域の経済と暮らしを支える行動になります。
日々の積み重ねが「持続可能な商い」になる
今後は「商品づくり」が単なるモノづくりではなく、「まちづくり」「ひとづくり」と直結していく時代です。地域と連携して商品やサービスを考えることは、売上アップのためだけではなく、地域そのものの持続性を高める活動でもあります。
コーディネーターとして事業者の皆さまと伴走していると、「うちのような小さな店でもSDGsなんてできるのか」というご相談を受けることがあります。けれども、実はその店の毎日の選択こそが地域の未来を形づくっています。仕入れ先の選び方、廃棄の減らし方、地域イベントへの参加など、身近な実践の積み重ねが「持続可能な商い」そのものです。
地域に根ざした商売の力は、決して小さくありません。区内には、地域の魅力を発信する商店や、他業種と連携して販路を広げている事業者が数多くあります。そうした取り組みを横につなげていくことで、「地域の中で経済がまわる仕組み」を築くことができるはずです。
地域資源の再発見と、顧客との共創。その両輪で、これからの商いを形づくっていく――。
そんな視点を持つことが、変化の時代をしなやかに生き抜くヒントになるのではないでしょうか。

あきない活性化コーディネーター