店舗がつくる、街の活気と魅力

あきない活性化コーディネーター
青山 由美子
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「店」とひとことで言っても、今やそのスタイルは、リアル、オンライン(ECショップ)、ポップアップなどさまざまです。この中で日常的に街を楽しくしてくれるのは、やはり常設のリアル店舗です。魅力的な店舗は、地域住民の生活を豊かにし、訪れる人々にその街ならではの魅力を伝えるスポットとなります。街の活気の源泉は、店舗とそこで働く人々、そして周辺の住民とのつながりです。

店舗は街のにぎわいの創出装置

店舗は日常的なにぎわいの創出装置となります。しかしそうあるためには、ただそこに在るというだけではなく、魅力的であること、あり続けることが必要です。

店舗の魅力づくりの第一歩は、店舗の正面(ファサード)を気になる「顔」として印象的に見せることです。立地や業種・業態によって表現の仕方はさまざまですが、ファサードはその店舗がどんな店で、どんなお客様に来て欲しいのかを伝える場所です。お客様を見ながらちょっとしたお化粧直しを次々と披露していくことも可能です。これはオンラインショップにはない特権です。

まずはお客様に気づいてもらえる「顔」をつくり、その店ならではの商品やサービスを目立たせることが大切です。これにより、店舗が「自分のための場所」と感じてもらえるようになり、訪れるきっかけをつくります。季節ごとに変化する街の景色と店頭は、活気のある街を演出します。

店舗は空間と商品と「人」がつくる

しかし、ファサードづくりだけでは魅力的な店舗は維持できません。人の思いが込められた空間に、選び抜かれた商品が並び、それを購入するという体験には刺激と満足があります。これを提供できる場所にしていきましょう。

そのためには、まず入店していただく必要があります。しかし、小さな店は入りづらいという声を聞くことが多くあります。その理由は「入ったら何か買わないといけないのでは」という妙な恐怖感。

業種・業態にもよりますがドアはなるべく広くオープンにしておく、外から中が見えるよう工夫する、店員が入口の正面で待ち構えるようなレイアウトは避けることが大切です。

また、初めてのお客様への声かけは、入店時に笑顔と「何かあればお声をかけて下さいね」という気持ちが伝わるレベルの挨拶にとどめる、といったことに気をつけてみて下さい。

店員がじっと構えて待っているような感じだと、お客様は入りづらいものです。ちょこちょことディスプレイを変えたり、窓や商品をきれいに拭いたりするなど動き回っていると、良い印象を持ってもらいやすくなります。目を引き、興味を引き、入りやすくもなります。

こんなちょっとした工夫も、店先に活気をつくっていきます。

店舗は安心して試せるショールーム

店舗は、実際に商品を手に取って見ることができる「ショールーム」でもあります。オンラインでは得られない質の高い情報を提供できる場所として、お客様にとって大きな価値があります。

お客様が自由に商品を見る時に威力を発揮するのが、目玉商品の演出やPOPです。しかし、このPOPをあまり重視していない店が多いように感じます。これは大変もったいないことです。

POPは商品情報を提供するお店からの手紙です。店舗・商品の雰囲気に合うPOPで、値段だけでなく商品の特徴や魅力を十分に伝えましょう。

また、QRコード付きのショップカードを用意しておき、店舗とオンラインのつながりをつくることもオススメです。いつもそこにある実店舗なら、安心してお使いいただけるでしょう。そこで会話が生まれれば、また違った楽しみも生まれます。

Face to Faceの価値

リアル店舗の大きな魅力のひとつが、お客様と直接会話できる点です。ちょっとした会話の中にも、お客様の属性やライフスタイル、期待や不満についてのさまざまな情報があります。やり過ぎは禁物ですが、お客様の好みにあう他の商品を提案することもできます。入店したお客様がそのまま帰ってしまったとしても、さりげなく感謝の言葉をかけることで、また次回の来店へとつながるかもしれません。

近年、直接知らない人と話しをするという機会はどんどん減っているようです。店舗はそれが安心してできる貴重な場なのかもしれません。

もしお客様が声をかけてきてくださったらその機会を大切に、質問にきちんと答えてニーズを汲み取りながら、お店や商品の特徴をアピールしていきましょう。

外から店員さんとお客様の楽しそうなやり取りの様子が見えれば、それが別の人の入りやすさにもなり、ちょくちょく訪れたいお店につながっていくでしょう。

店舗はただ商品を提供するだけでなく、地域の魅力を引き出し、人々に楽しい体験を提供する場です。魅力的な店舗が集まると地域の活力を生み出し、街全体の魅力も高めます。自分たちの街を「楽しい場所」にする重要な役割を店舗は担っているのです。

あきない活性化コーディネーター 青山 由美子

もともとはグラフィックデザインから商品開発・ブランド企画・開発を行うようになり、その流れで店舗企画提案、事業そのものや店舗新業態の企画・開発計画などに携わるようになりました。 その後活動の場が広がり、1994年に独立。 大型の商業・文化施設、各種の複合施設に関する調査・企画計画、都市・地域整備調査・計画で商業・サービス床を担当、地域活性化や商店街活性化、まちづくり支援などを推進してまいりました。 独立して30年がたち、その間に執筆、研修講師、ワークショップファシリテーション等も行っています。 10年ほど前からは、まちの賑わいの基礎となる小規模個店の支援を中心に活動しています。