仕事は楽しく、適度に頑張る

あきない活性化コーディネーター
塩沢 秀人
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皆さんも私も経営者であり、ビジネスに勤しんでいます。お互いに、という立場で語らさせていただきます。今回のお話は、仕事は一生懸命ではなくて適度に頑張っていきましょう、そして、仕事はお互いに楽しくやっていきましょう、という内容です。

経営者自身も重要な経営資源

ヒト、モノ、カネ、情報は大事な“4つの経営資源”だとされます。経営資源とは、ビジネスを進めていくときに、目標を達成するために使える「材料」や「力」です。

4つの経営資源のうち、ヒトがいちばん大事な経営資源なのだ、と言われます。モノやカネや情報は、ヒトがそれを使って活きるのであって、活かすも殺すもヒト次第です。
スタッフの人材(ヒト)を大事にするのはもちろん、さらに心得ていただきたいのは、

経営者だって人材そのもの、経営者自身も大事な経営資源なのだ!という事実です。

店主や経営者は健康で、活き活きとしていなければなりません。

経済産業省が「健康経営」の推進を主導しています。「従業員の健康を向上させるための取り組みはコストではなく、企業の価値向上のための投資である」という考え方です。

定期健康診断の徹底・フォローアップ、メンタルヘルス対策、働き方改革(残業削減・有休取得促進など)、生活習慣改善などについて、取り組みを強化している会社が増えてきました。しかし、経営者自身の健康維持や労務管理が見落とされがちです。経営者が病気や体調不良で離脱すると、経営の不安定化に直結します。スタッフの模範となる意味でも、心身のコンディションを整えるのは経営の一部と言えます。スタッフに対して、「私は経営(お店や会社)の持続的な安定のために、自分自身の健康管理にも意識的に取り組んでいます」というメッセージを社内へ発信するのは、スタッフの健康管理に大いに効果的です。

私も皆さんと同じ経営者、事業主なのですが、私自身に余裕がなくて、身体に良くないと感じる行動や仕事の仕方がたびたびあり、歳を重ねて最近特に気になります。「忙しくてテレビのニュースを見る暇もない」、「帰ったら布団に入るだけ」という状況になってしまうと情報を十分に得られなくて、世間に疎くなってしまいます。

経営者の健康と柔軟な思考

商業に携わる方は、先を見通す目と広い耳を持つべき存在です。そのためには自らの健康を保ちつつ、休息を通じて視野と感度を高めることが不可欠です。「健康な心身」と「広い視野による情報収集」は、いずれも経営判断の質に直結するので、ぜひとも両立させていただきたいです。
では、恒例の四字熟語の紹介です。

飛耳長目(ひじちょうもく): 遠くの情報にも敏感に耳を傾け、広い視野で物事を見通すこと。
経営者には、「世の中の動向」「顧客の変化」「業界の流れ」「技術革新」など、幅広い情報にアンテナを張り巡らせる力が求められます。

心身が疲弊していれば、注意力も感度も鈍り、情報を受け取る力が弱まります。

飛耳長目の実践には、まず健康が前提条件となるのです。

不主故常(ふしゅこじょう): 過去の決まった在り方や固定観念にとらわれず、柔軟に判断・行動すること。
世の中は刻一刻変化しているので、昨日は正解だったとしても、今日には失敗になってしまうことがあり得ます。経営者には、

状況に応じて思考を柔軟に切り替え、新しい視点で意思決定をする力や余裕が必要です。

常に走り続けていては過去の成功体験に縛られ、変化に対応できなくなってしまいます。思考の余白を生む「休息」や距離を置く「時間」が重要だと思います。冒頭で申し上げた「一生懸命ではなくて適度に頑張っていきましょう」というのは、私の実感に基づく皆さんへのメッセージです。

生成AIを活用し、仕事を楽しく効率的に

今日はもうひとつ、

「仕事はお互いに楽しくやっていきましょう」

と申し上げます。

先日、とある店主との会話で「生成AIを使ったら、楽しく仕事が出来そうな気がします。自分の店の従業員と話していたら、Instagramで映える投稿やイベント広告の売出し文句を考えるために、生成AIを使いたいと言うんです」と聞きました。

生成AIを使うと、商品や販促の創造性が高まって差別化できるというのはよく言われますが、そればかりでなくスタッフと一緒に生成AIを使って、和気あいあいとアイディアを探すプロセスは、楽しい時間になるのでとても大事だと思います。

生成AIは正解を出す機械ではなく、発想を広げる会話相手です。ときどき妙な答えが出てくるときもあるので、「えっ、この答えホント?」と思って笑って参考にするのが良いでしょう。

最後に、「仕事を楽にする」「楽しく仕事をする」という視点から、生成AIを活かす準備をお勧めします。生成AIの使い方をある程度覚えると、Excelファイルでまとめた日々の売上代金や仕入代金などの入出金の集計や分析を、簡単かつ楽に行えるようになります。

お店の経営では、「損益よりも資金管理が肝心」です。しかし、現場の実感として売上や仕入の管理は大変だ、と負担に感じるという方は少なくないでしょう。

まずは、①日々の売上金を現金・カード・電子マネーに分けて集計する、②仕入代金・経費・給与の記録を支払日ベースの時系列で整理する、③売上金の回収(入金)スケジュールの表を作成する、を試してみてはいかがでしょう。簡単に言うと、①「日別売上金入力シート」、②「仕入・給与等支払シート」、③「カード・電子マネー入金シート」などを作るのです。

①~③のシートを作って記録すると、おカネの出入りのタイミングが見えてきます。シートをExcelで作成して生成AIと連携させれば、売上金や仕入支払の集計と資金管理に役立つのです。「経営に役立つ生成AIやExcel活用マニュアル」といった内容の書籍も出版されています。是非参考にしてみてください。

あきない活性化コーディネーター 塩沢 秀人

総合建設会社の関連事業部門・不動産開発部門、民鉄会社の沿線開発部門に勤務。 会社を早期退職し、現在は中小企業診断士、中小企業組合士、不動産コンサルティングマスターとして活動。 各地で企業を営む皆さんやまちにお住いの方々と、一緒に仕事をしてきた経験を活かして、みせづくり、ものづくり、まちづくり をお手伝いしています。