お客様は「商品のすごさ」だけでは動かない-心に響く「うれしい未来」で選ばれるお店になる方法-

あきない活性化コーディネーター
宮本 光博
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「うちの商品は本当に良いものなのに、なぜか売れない…」
「お店のこだわりを伝えても、お客様に響いている気がしない…」

情熱を込めて経営されているお店や会社の多くのが、こうした悩みを抱えています。
ライバルが多い現代は、単に「安い」「品質が良い」といった商品の特徴を伝えるだけでは、お客様の心を掴むのが難しい時代です。
この状況を打破する鍵となるのが「お客様にとっての“うれしい未来”を伝える」こと。お客様が「これを買ったら自分の生活がもっと素敵になる!」と感じられる未来の価値を、具体的に描いて伝える工夫が必要です。
特に小さなお店や会社にとっては、この「伝え方」が最大の武器となります

「商品のすごさ」と「手にした後の幸せ」、この違いが重要

まず、お客様への伝え方で最も大切な「二つの言葉」の違いを整理します。

1. 「商品のすごさ」(メリット)

商品やサービスが持つ機能や特徴、優れている点そのもの。説明書やスペックに書かれているような目に見える「事実」がこれに当たります。
例:
・「このジャムには、添加物を一切使っていません」
・「このカバンは、とても軽いです」
・「この学習塾は、合格者をたくさん出しています」

2. 「手にした後の幸せ」(ベネフィット)

商品のすごさによって、お客様の生活や気持ちが「どんなふうに良くなるのか」という未来の「うれしい変化」のことです。
例:
・無添加ジャム
→ 「大切な家族の食卓に、心から安心して『おいしいね』と笑い合える幸せな朝ごはんの時間」
・軽いカバン
→ 「毎日の通勤や旅行が驚くほど楽になり、一日を軽やかな気持ちで過ごせる快適さ」
・合格者が多い塾
→ 「お子さんが『やればできる』という自信を持ち、学ぶ楽しさを知ることで将来の夢への扉が大きく開かれること」

お客様が本当に欲しいのは、「商品のすごさ(メリット)」そのものではなく、その先にある「手にした後の幸せ(ベネフィット)」です。つい商品の特徴ばかりを説明してしまいがちですが、お客様の心を動かすのは、その先にある“自分の人生が豊かになる未来の物語”なのです。

なぜ、小さなお店にこそ、この伝え方が大切なのか?

規模の大きくないお店や会社こそ「手にした後の幸せ」を伝えることが最強の武器となります。その理由は主に次の3つです。

1.大手との差別化の鍵となる

大手企業は潤沢な資金とブランド力で「品質の良さ」や「価格の安さ」を大規模な広告で訴求できます。しかし、小さなお店が大手の土俵で戦っても勝ち目はありません。小さなお店だからこそできるのは、お客様一人ひとりに寄り添い、その方の「未来の幸せ」を具体的に想像させるような、心に響くコミュニケーションが大切です。お客様の感情に深く訴えかけるベネフィットの提示は、単なる商品のスペックでは測れない「あなたのお店だから買いたい」という強い動機を生み出します。

2.お客様との信頼関係を深める

お客様は単にモノが欲しいのではなく、自分の悩みや願望を解決したい、より良い未来を手に入れたいと思っています。お客様の潜在的なニーズや、商品を手にした後の喜びを具体的に語ることで、「このお店は私のことを深く理解してくれている」「私の幸せを真剣に考えてくれている」と感じ、強い信頼感が生まれます。特に小さなお店では、店主やスタッフの想いが直接お客様に伝わりやすいため、ベネフィットを軸としたコミュニケーションは、お客様との間に深い絆を築く上で非常に有効です。

3.口コミやリピートにつながりやすい

人は「良いモノを買った」ことよりも「感動的な体験をした」「期待以上の幸せを手に入れた」という経験を他人に話したがるものです。
お客様が商品を通じて「うれしい未来」を体験できれば、それは単なる消費で終わらず、心に残るストーリーとなります。そのストーリーは、知人への強力な口コミとなり「あの店に行けば、きっと私も素敵な体験ができる」という期待感を生み、新規顧客の獲得やリピート購入へとつながりやすくなります。
商品のスペックを語るだけでは生まれない、強い共感と熱量が、お客様の行動を促すのです。

「ベネフィット」の伝え方には、各店舗の創意工夫が必要です。

例:
【喫茶店だったら?】
メリット: 「うちのコーヒーは、自家焙煎のスペシャルティコーヒーなんです」。
ベネフィット: 「一口飲むと心がホッと落ち着いて、午後の休憩時間が最高の癒やしの時間になるはずです』。

【工務店だったら?】
メリット: 「高気密・高断熱の家づくりをしています!」
ベネフィット: 「冬は暖かく夏は涼しいから、一年中快適に過ごせて、光熱費も抑えられるので家計に優しいです」。

【小さな本屋さんだったら?】
メリット: 「店主が心を込めて選んだ、おすすめの本を並べています」。
ベネフィット: 「自分では選ばないような本との出会いが、あなたの毎日の生活に新しい発見や彩りを加えてくれるはずです」。

まとめ:モノではなく“幸せな時間”を届ける時代に

お客様は「良い商品」そのものではなく、その商品を通じて「自分の毎日が、今より少しでも楽しく、豊かになる」と信じられる“きっかけ”を求めています。

最後に、ご自身の商品やサービスについて改めて考えてみてください。
「この商品の本当にすごいところは何か?」
「そのすごさによって、お客様の毎日や心は、どんなふうにうれしく、幸せになるのか?」

この問いの答えこそが、お客様に選ばれ、長く愛され続けるための最も確かな道しるべになるはずです。

あきない活性化コーディネーター 宮本 光博

大学卒業後、家業の建設業に就職。建設業とともに企業内起業にてウエルネス事業を展開。2002年に「地域創生」企画プロデュース業として独立。地域の文化・芸術・観光・物産を媒介に、自治体・企業・個人・各種団体の協働型案件を中心に様々な分野の地域活性事業に取り組む。2012年からは「地域創生」に加え、新たに「企業活性」をテーマに事業分野拡大。業界業種を問わずシームレスに事業支援。現場実践主義にて良い成果を創出することを信条としています。