疾走続ける下町ボブスレー――高精度・短納期のモノづくりで世界へ

bob_jigyou_01.jpg平成26年11月6日、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会は、4号機・5号機を製作することを決めた。新たに大手企業の協賛が決まり資金を確保できたことから、年末の全日本ボブスレー選手権で一人でも多くの選手に乗ってもらうための新規製作だった。11月12日には大田区産業プラザに部品図150枚を並べ、集まった町工場に無償での部品製作を依頼した。基本設計は平成25年に製作した2号機と同じで部品製作の経験があるとはいえ、選手の練習や予選参加を考えると、製作期間は3週間ほどしかない。複数工程が必要な部品では、最初の工程を担当する町工場の納期は1週間を切った。

大田区の町工場は、高精度・高品質な部品を「短納期」で製作するのを得意としている。モノづくりの町と呼ばれる大田区には、現在、機械・金属加工を中心に4000社弱の製造業事業所が集積し、その9割は従業員19人以下の町工場だ。部品を量産する工場は少なく、大手企業の新製品開発をサポートする「試作部品の加工」や、大手企業の量産ラインで使う「製造設備の部品加工」といった少量多品種生産を手掛ける町工場が多い。自動車も電気製品もあらゆる商品のライフサイクルが短命化するなか、大手企業の新製品開発期間短縮の動きを、大田区町工場の短納期対応力が支えている。

bob_jigyou_03.jpgボブスレー競技のソリ開発も、毎年の冬の競技シーズンに間に合わせるため常に時間との戦いだ。平成25年に製作した2号機では、軽量化のため中空のリアアクスルシャフトを開発・製作する挑戦があった。国際競技団体が定めるレギュレーションでは、この部品は一体成形でなければならないと規定されているため、パイプの両端に別部品を付ける構造にはできない。そこで下町ボブスレー2号機では、①鍛造加工で鉄の塊をシャフト状に成形②切削加工で大まかな形状に③ドリル加工で中空に④鍛造加工に戻し両端を閉じる⑤熱処理加工でしなやかな特性を持たせる⑥切削加工で最終仕上げ-との複雑な工程を採用した。すべての工程を10日あまりで完了できたのは、特定の加工分野で高度な技術を持つ町工場が狭いエリアに集積している大田区だからこその連携プレーだった。

新たに製作した4号機は、製作決定からわずか1ヵ月で完成。12月23日に長野スパイラルで開かれた全日本ボブスレー選手権に、下町ボブスレーは4台のソリを提供した。特に女子は出場4チーム中3チームが下町ボブスレーを使用、海外製そりを使用した1チームを合わせ新鋭機がそろい、全チームが男子を上回る瞬間最高速度を記録した。古いソリで戦ってきた女子選手たちが新鋭機で切磋琢磨し、ボブスレー競技全体の活性化につながっている。

bob_jigyou_02.jpg年が明けて1月、下町ボブスレーはさらに新たな設計アイデアを試すため、再び突貫作業で2号機と4号機を改造。国内の長野スパイラルが競技シーズンを終えているため、滑走可能期間が長い欧州へ遠征し、2月23日から25日までオーストリア・インスブルックでテストを実施した。大手企業のモノづくりを黒子として支えてきた町工場が、自ら開発したソリで冬季五輪の舞台に立ち、技術力を世界へアピールする-。その夢の実現に向け、下町ボブスレーは全力疾走を続けている。

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