こだわり商品の高付加価値商店

巨大資本が運営するスーパーやコンビニエンスストアの安くて美味しい食品にどう対抗するか―。大田区の中小商店が出した答えのひとつが、こだわりの素材を使った付加価値の高い食品の販売だ。大田区には田園調布に代表される高級住宅地エリアがあり、見る目の確かな住民を相手に商いを展開する「高付加価値商店」も数多い。表彰制度「大田のお土産100選」の受賞企業2社を事例に、小さなお店が挑戦する姿をリポートする。

商品は2種類に限定

wagashi asobiは、老舗和菓子店で修業した2人の若手職人が平成22年に開業、東急池上線・長原駅そばの一戸建てを店舗として使っている。販売する商品は、「ドライフルーツの羊羹」と「ハーブのらくがん」の2種類だけ。これまで250冊以上の雑誌やテレビ番組で紹介され、スタッフを4人に倍増して生産能力を強化した。

ドライフルーツの羊羹は、北海道産小豆を使った羊羹にイチジクやイチゴのドライフルーツやクルミがゴロゴロと入ったオリジナル商品で、1本2,160円。洋酒にも合う新しい和菓子として注目を集める。ハーブのらくがんも、仏事で使うことの多い地味なお菓子にローズマリーやハイビスカスの香りを与え、新しく、楽しい商品に仕上げた。いずれも厳選した素材を使い手作りした付加価値の高い商品となっている。

創業者の稲葉基大さんと浅野理生さんは、50万円ずつ出資、稲葉さんの地元・長原のカフェが閉店した店舗を手作りで改装した。設備投資を極力抑え、自分たちの作りたい和菓子だけを作る。稲葉さんは「普通の和菓子屋さんはシュークリームまでたくさんの商品をそろえていますが、コンビニエンスストアとの価格競争に巻き込まれる恐れがあります。起業前に見学した京都の老舗和菓子店は少ない品数を家族だけで商い、何百年と商売をしていました。強さを証明済みの、このビジネスモデルをやらない手はないと思いました」という。

wagashi asobi外観 ドライフルーツの羊羹

田園調布で創業44年

レピドールは、田園調布の駅前ロータリーすぐに瀟洒な店舗を構える。1階が店舗、2階が喫茶室で、地域の住民に愛されて創業から44年が経過した。商品数はケーキ類が20ほど、焼き菓子が30ほど。高質なチョコレートを使った「ガトーザッハ」など人気の定番商品を中心に、品質の高い栗をまるごと使った「マロンタルト」など季節ごとの素材を生かした新商品も提案している。すべてベテラン職人の手作りだ。

定番商品の価格は300~400円台が中心で、都心の流行店に比べると手ごろな価格設定になっている。田園調布の住民である顧客は、店にレプリカの絵画を飾ると「ニセモノを使うの?」と言ってくるほど目が肥えている。長く愛されているだけに顧客が数十年前の価格を知っており、簡単には値上げさせてくれない。2代目経営者として事業継承し4年目の大島崇嗣さんは「地元のみなさまに愛されるお店でありたいですから」と笑う。

レピドール外観 レピドールのケーキ

個店の活躍で大田区を盛り上げる

wagashi asobiとレピドールは、高品質な商品を販売することに加え、店舗や商品パッケージのデザインが優れていること、地元の顧客を重視していること、手土産需要が売り上げの中心であることが共通する。このため、wagashi asobiは一度始めた百貨店での販売を「来店してくれたお客様に品切れがあっては申し訳ない」(稲葉さん)とやめてしまった。レピドールも二子玉川の百貨店に店を持つが、これ以上販売網は拡大しないという。稲葉さんも大島さんも「手土産を渡した相手に『うちの近くでも売っている』と言われたらお客様ががっかりしますから」と口をそろえる。

そんな両社は今後の売り上げ拡大策として、大田区内で認知度を高め、区内のより広い範囲から来店客を集めることを目指している。その第一歩として表彰制度「大田のお土産100選」に応募した。稲葉さんは「個店が頑張って町を盛り上げたい。住民のみなさんに『こんなお店のあるいい町なの』と言っていただけるようになりたい」という。高品質な商品を扱う付加価値商店は大田区の魅力。テレビでよく紹介される安くておいしいB級グルメも大田区の魅力。たくさんの魅力的な商店の集積が、魅力ある大田区を形作る。

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