2016年12月07日 公開

超売り手市場を乗り越えろ! ~区内企業のユニークな人材確保策~

厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」における有効求人倍率の推移を見ると、リーマンショックで0.5%の最低水準まで落ち込んだ平成21年以来V字回復を続け、26年に1.1%と売り手市場に転じた。さらに27年以降の有効求人倍率は1.2倍に達し、平成元年のバブル最高潮期に迫る勢いとなっている。

新卒者自体が減少している現在、中途採用で人材確保を補っているのが現状だが、中途(正社員募集)の採用人数も約4割の企業が「確保できていない」と回答している。中小企業の採用活動は、最初の応募者を集める段階から厳しい状況にあるのが実情だ。

中小企業の人材募集方法は、大学就職課への働きかけやハローワークへの登録、知り合い紹介、HPやソーシャルメディアを活用した情報発信、外国人研修生の受け入れなどがある。このうち、4年制大学の新卒採用では、大手企業が採用を活発化しているため昨年に比べ早い段階で内定を獲得した学生が多い。

「今後は若年人口の減少が進むため、就職活動は売り手市場が続く。就職課を廃止して入学者の獲得活動にスタッフを回そうという大学まである」(私大就職課関係者)という。

大田区産業振興協会では、若者に中小企業の魅力を発信するイベント「ヤングジョブクリエイション」や、大学のキャンパス内に出張して面談を行う「ミニ面接会」などの事業を展開。区内中小企業と若者が出会う場を用意している。

一方で区内企業の間でも、独自の切り口で募集を行う例がでてきた。

 

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株式会社エース(大田区城南島)は、他の町工場の後継者候補に半年〜数年間という期間限定で働いてもらうユニークな採用活動を始めた。

同社は創立43年目、自社での切削加工だけでなく、全国337社余りの協力メーカーとのネットワークを確立し、鋳物から樹脂部品、製缶からゲージまで、あらゆる加工に対応する「ものづくりファシリテーター」を掲げている。多くの町工場と交流するなかで、「後継者の修行」を自社のマンパワーに活用することに目を付けた。

具体的な仕事内容は、社長や営業マンの鞄持ちからはじめ、見積り、納品、加工の打合せ、事務処理などを営業アシスタントとして行ってもらう。出身企業からエースへの出向契約とし、出向期間中の給料は1日1万円を予定する。

後継者候補はエースでの仕事を通じて営業力が身に付くほか、大田区を中心としたものづくりネットワーク(人脈)を持つことができる。エース側は期間限定とはいえ優秀な人材を確保でき、新しいメンバーが加わることによる社内の雰囲気の活性化や他の社員のモチベーション向上も期待する。

 

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エースの西村修社長は「なかなか新人を採用できず、またすぐに辞めてしまうケースもあることから終身雇用でなくても良いのではないかと考えた」という。

 

また、発注側企業が複数の加工工程を一括発注するケースが増えている中では、エースが培ってきた営業力とものづくりネットワークを生かすビジネスモデルは有効で、受注も拡大している。

「当社のビジネスモデルを短期間で学び後継する会社で存分に発揮してもらえれば、中長期的にものづくり産業の発展につながるのではないか」(同)と話している。

2016.12.7
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