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平成15年度 国内外の環境変化に伴うわが国機械部品産を業の対応方策に関する調査研究報告書

2004/03/10

第I部 国内の環境変化と制度改革への対応調査研究
第2章取引商慣行が素形材産業に与える影響
2.1  環境変化への対応・解決策の模索

(財)大田区産業振興協会
専務理事 山田 伸顯

1.転換期にある下請取引関係

 アジア、特に中国の技術的台頭により、日本のメーカーの海外シフトが加速している。それに伴い、素形材分野においても日本国内での調達から海外調達に切り替えるところが増大し、国内に立地する鋳造・金型メーカーなどの受注が激減するという状況が現れ、空洞化が深刻さを増している。グローバル化によって総体として仕事の流れが転換しているにもかかわらず、多くの国内の受注型企業がそれに対応できないことからくる停滞感が漂っている。

 また、金型メーカーでは「意図せざる図面等の流出」といった問題が発生し、技術流出の実態が顕在化したことから、ユーザー企業との関係が改めて問い直される契機となった。この問題を通して見えてきたことは、日本における発注側と受注側の取引慣行のあいまいさと、強者と弱者の一方的な優越関係である。金型製造が「下請代金支払遅延等防止法」「下請中小企業振興法」の対象外であったということ自体、日本の取引慣行から発生する問題を法的に捉えていなかったことを表している。しかし、この二つの法律の一部改正が行われ、金型製造を下請取引に追加することになったとはいえ、そもそも下請法そのものが、これまで下請中小企業にとって親企業からの法外な要求に対してどれほど有効に機能したのかが問われてきたのである。「下請中小企業振興法」に規定された「振興基準」において、親事業者が下請事業者に対して配慮すべき事項を膨大に列挙していることは、裏を返せば親企業と下請企業との間では発注に関して無理難題が押し付けられてしまうのが通常ということである。これは対等な取引関係とは程遠い、絶対的な主従の力関係にあることを物語っている。古くから日本的特質と言われてきた大企業と中小企業との「二重構造」という関係は、活力のある中小・中堅企業が数多く登場する今日に至ってもなお解消されていない課題なのである。

 高度成長期には拡大するパイの一部にありつけた下請企業にとって、論功行賞の伴う主従関係は歓迎すべきものであった。下請企業にとっても目指すべき方向性が明確な路線を突き進めばよかったからである。しかし、受注量が低減し、単価の削減とあいまって売上高の減少を招いている今日の下請中小企業は、親企業の一方的な要求に服していては自社の存立が危うくなる。そのため自社独自の製品開発を試みて、下請企業から脱しようとするものも多く現れるようになった。また、大手製造業も従来の系列取引を崩し始めており、日本の高度成長を支えた下請取引関係が大きな転換期を迎えているのである。

2.苦情・紛争処理に見る下請取引の実態

 下請取引の実態は、下請企業と親企業との間に発生したトラブルからその一端を見ることができる。

 都道府県等中小企業支援センター等は、下請取引のあっせんなど下請中小企業の振興を図る機関であるが、そうしたトラブルについて親企業と下請企業の双方から事情を聴取し、その解決のための調停、あっせんを行っている。

 財団法人東京都中小企業振興公社は東京都におけるその機関である。公社は都の産業振興事業全般にわたる幅広い分野の事業を執行する役割を担っているが、中でも下請振興は、もともと東京都下請振興協会が母体となって設立した経過もあり、基幹的業務の一つである。公社に対しての下請取引に関する苦情・紛争の申し出件数は、平成14年度で98件と前年度と同数であった。全国のセンターに寄せられた同年度の件数が300件弱であり、東京都は約3分の1を占めている。

 理由別で見ると「代金回収に関する紛争」が35件と最も多くなっている。内訳としては「売掛代金の回収に伴うもの」が33で大半を占めている。内容的には「発注者側の一方的な理由による瑕疵責任」、「追加分について次回に回してほしいといわれそのまま回収できない」、「納め先の発注元から支払がないため支払えない」、「双方の話し合いがなされてないにもかかわらず賠償金を相殺されそうである」といったものである。他に「発注が口頭で、値引きしないと先方が引き取ってくれない」という「値引きに関する苦情」もある。

 次に「取引契約をめぐる紛争」では、「契約内容が変わり金額が増えているにもかかわらず前の契約金額のままである」等がある。

 その他「一般商取引に関する苦情」では、「100%依存であったのに、急に仕事を打ち切られた」、「発注先の意向に合わせて設備を入れたのに仕事がこない」等である。(財団法人東京都中小企業振興公社 苦情紛争処理報告書 平成13年度、14年度)

 これら件数にカウントされる苦情・紛争は、申し出者が名乗って問題が表に出たケースである。親企業に知れたらその後の取引を打ち切られることを恐れて、匿名で電話相談をする下請企業の数は3倍にも上る。ぶちまけようのない憤懣を第三者に話すことで気を紛らわしている弱い立場の下請企業の姿が浮かんでくる。

 金型の受発注取引で多く出される苦情は、金型メーカーが発注図面どおり作ったにも関わらず、現場で試し打ちしたときに予定した製品とならないため、何度も作り直しを求められ、その直し分に対しての代金支払がないといったことである。設計者は設計図をデータで作成するときに、実際にショットしたときの遊び部分を計算していないために生じる問題であるが、その責任を発注側が負わずに、金型メーカーに転嫁するというケースである。中には、その結果納期が遅れた場合に、遅れに対する損害賠償を金型メーカーが要求されるといったとんでもない話も苦情として挙がっている。

 また、発注者と受注者の間に仲介者が入って、その仲介者から仕事が発注される場合がある。元の発注者が倒産してしまったとき、代金が支払われないという問題が起こる。その際には、あくまでも仲介者の発注責任を問う形で支払の調停を行うようにしているが、分割支払で妥結することになっても受注者側としては支払の遅延利息を放棄するケースが多い。

 中小企業振興公社はこうした苦情に対する処理を、「相談・助言」、「法律相談」、担当者による「調停あっせん」の方法で処理している。民事の争いになる場合には弁護士等に紹介することもある。明らかに「下請代金支払遅延等防止法」に違反している場合は、中小企業庁の調査に基づき公正取引委員会が対処することになる。公社は法的に取り扱えるかどうかは関係なく、様々な苦情の第一線窓口としての機能を果たしている。

3.対等関係に向かう兆し

 「下請代金支払遅延等防止法」は、親事業者の下請事業者に対する取引を公正にすることによって、下請事業者の利益を保護することを目的とした法律であるが、これまで必ずしも有効に機能してこなかった面がある。

 例えばこの法律が適用するのは、資本金規模が3億円を超えるか、又は1千万円超3億円以下の親事業者から、それよりも規模の小さい下請事業者に製造委託又は修理委託する場合を前提としているため、親・下請事業者の双方とも1千万円以下の企業間での紛争については適用できない。東京都中小企業振興公社に申し出があった紛争の内、こうしたケースは13年度で47%、14年度で37%を占めており、多数が法律の適用外であることが分かる。また、親事業者は法律の適用を免れるため、規模の小さい関連会社から下請企業への発注を行うようにするなど、抜け道を使うことが良くあるということである。

 また、下請代金の支払期日の規定では、下請事業者の給付を受領した日から60日以内に支払をすることになっているが、多くの場合納品後の検収を終えておよそ4ヶ月の手形を渡されるのが通常と言われている。金型のように製作期間が長期にわたり、調達資材費がかさむものについては、現金化までの繋ぎ資金の負担が極めて大きくなる。

 また、「下請中小企業振興法」では、下請事業者及び親事業者のよるべき「振興基準」を定めることとしているが、親事業者の協力をうたっているにもかかわらずこれに対する罰則を設けているわけではなく、遵守を強制するものではない。

 したがって、下請法の改正によって金型製造業を対象として加えることになっても、下請法そのものが有効に機能していない以上、実態的には金型取引の改善に役立つがどうか訝れたのである。

 しかし、平成15年における法改正に向けての動きを眺めていると、金型製造を下請法に位置付けたことにより、これまで一方的に親企業が優位であった関係に変化が生じる可能性を見ることができる。

 平成15年5月27日に開会された経済産業委員会において、参考人として招致された日本金型工業会の上田会長は、「キンケイ」と一般的に読まれることも多かった「金型」が法律上も掲示され、認知されるようになったことに対し感謝する旨を意見として述べた。しかしながら、東南アジア、中国との関係で、金型の図面流出というアンフェアな取引やベテランの金型技術者など人材の流出といった問題に頭を痛めていること。さらに中国の30%安のコストを提示され、経営基盤が弱い大多数の金型メーカーは、コストダウンに応じざるを得ずまったく利益の出ない状況になっており、苦境に立っていることを陳述した。日本の製造業を支えてきた金型産業が今やピンチに陥っていて、競争力をさらに弱くしている。このまま放置しては日本の製造業に明日はないと訴えた。そもそも下請けという言葉が差別用語ではないか。イコールパートナーとしてとしての意識をもった法律に改正してもらいたいという意見も述べた。

 同じく参考人となった早稲田大学の鵜飼教授は、金型産業が多品種少量生産に向かう国内での物づくりのコアになるものであり、その多くを中小企業が担っているという意味から、下請法改正に金型を入れたことを特に評価すると発言した。また、中小企業といっても、実態的には生業的な企業形態である小規模企業の方向が、多品種少量生産において個人の持つ技能・技術やノウハウを発揮しやすいという点から、生き残るべき重要な方策であること。そのため、企業規模格差により生ずる取引の不公正から中小企業を守ることが国策としても重要な意義があると思うと述べた。したがって、下請法の役割はますます大きくなると論じている。

 この経済産業委員会の開会に先んじて、「不正競争防止法」の改正が行われた。金型の図面流出など、営業上の秘密を使用することによる利益の侵害に対して罰則が科されることになった。

 このような金型製造と取引に関わる法律改正の動向を見るとき、極めて専門的分野の問題にもかかわらず、世論としての関心を高めることができたと思われる。また、「下請代金支払遅延等防止法」が制定された昭和31年以来の大きな改正であり、(1)対象となる取引を追加(情報成果物、役務、金型)しただけでなく、(2)親事業者の遵守事項の追加(役務の利用強制、経済上の利益の提供要請や不当なやり直し等をしてはならないこと)、(3)違反行為に対する措置の強化(違反した親事業者に対して、原状回復措置だけでなく再発防止措置を講じる勧告ができる。また、公正取引委員会の勧告を公表できる)、(4)書面の交付義務違反及び書類等の作成・保存義務等違反に係る罪並びに検査忌避等に係る罪の罰金の上限額を引上げるなど、法律の実効性を高めるべく強化改正を行ったのである。

 金型という世界シェア4割を占める、日本の産業にとって最も重要でかつ高度な技術が国内で維持できるかという危機が迫っている。このような事態に当たって、金型製造を下請法に組み入れたことから、下請法の運用が従来より強化される可能性が生じていると考える。金型は部品の調達と異なり、ユーザーにとっても基幹的な生産技術を左右するものであるため、力をもった金型メーカーはまさに「イコールパートナー」と見なし得る存在である。下請法という名称の改正もにらんで、法律の実効性を問われてくることになる。一般の下請企業もこれを機に契約書面の取り交わしなどを求めることが、一方的な関係を改善するために不可避であると自覚すべきであろう。周りの仲間とともにひとつずつ声をあげていくことなしに、理不尽な不利益をこうむり続ける弱者の立場から脱却することはできない。

4.海外からの仕事の取り込み

 下請という発注・受注企業間での上下関係が生じるのは、仕事の需要が供給をはるかに上回り、バランスが常に崩れていることが基本にある。一社専属の下請関係ではなく、取引先親企業を多数持っていて需給バランスを取っている中小企業もあるが、多くは系列に組み込まれているか、そうでなくとも特定親企業への依存度の高い中小企業である。生産の海外シフトが進む中、ますます仕事量が減少するため企業間のコスト競争が激化し、採算点割れでも甘んじて受けざるを得ない状況である。

 確かにアジアにおける生産拡大は今後も続くことは間違いないと考えられる。中国から日本への輸入額は2002年にアメリカからのそれを上回り、現在もさらに伸びている。しかし一方、中国に対する日本からの輸出も増大の一途をたどっている。中国、台湾、香港を合わせた「中国圏」への輸出額も対米を抜くと報じられている。中国生産が増大すればするほど、コアパーツ(基幹部品)の輸出も増大するためである。つまり日本でなければできないもの、あるいは返ってコストの高くつくものが多くあるということである。技術力の差は、特に機械系分野においては未だに歴然としている。まして人に蓄積した技術・技能は容易に同じ水準に追いつけるとは思われない。

 そこで、アジア特に中国に仕事が流れるという図式だけでなく、逆に日本へ新たな仕事を流れ込ますという道筋を切り開くべきだと考える。日本の大手メーカーを中心に中国に進出し、現地企業から安く部品調達を行ってきたが、中国のメーカーも技術水準を高めていくうちにより高度な技術を必要としてきた。中国内でそれを調達できないため、日本の技術を欲するようになっている。日本の中小企業と中国の現地メーカーあるいは進出した外資系企業とのマッチングを仲介する事業を展開するべく、様々な商社や製造業ネットワークが動き始めている。大田区産業振興協会も台湾、韓国、中国それぞれの関連機関と提携を進めてきた。また、1994年から海外の見本市に区内中小企業と共同で出展参加するよう支援し、中小企業が自ら国際的取引に取り組む機会をつくってきた。こうした中小企業の国際化支援とは別に、国内では全国のメーカーからの発注に応じられる受注企業のあっせんを行ってきた。今後、国際的に受発注取引の仲介・あっせんを行える体制を構築しようと考えている。当面、上海を中心として交流を深め、情報を交換しつつ双方の企業を紹介できる協力関係をつくるつもりである。

 このようにして日本と中国・アジアとの生産連携を推進し、日本の中小企業が直接的にマーケティングに参画できる仕組みをつくることができれば、国内メーカー依存一辺倒の下請体質から脱するチャンスとなり得る。なによりも仕事の絶対量が増加することで、需給バランスを回復できる。また、国際的なマーケットにおいては、前金払い・中間払いなども含めて現金決済が通常であり、国内のように検収後に手形を渡されるという慣習を改めるきっかけにもなる。したがって、契約書を取り交わすということも当たり前のことになる。グローバル化を契機として日本的な取引慣行を変革することが求められてくるのである。

5.中小企業の共同ネットワークの形成

 ピラミッド構造をなす系列取引においては、末端の企業間において相互の連携はほとんど見られない。しかし、大田区のような中小企業の集積地においては、「仲間取引」といわれる横請型ネットワークが存在している。「大田区工場ネットワーク実態調査報告」(大田区 平成13年)では、「加工外注」に「下請取引」と「仲間取引」の2つの取引形態が見られるとし、「仲間取引」を「大田区内の機械金属工業における加工業間の加工外注であり、相互補完的な双方向の取引関係のことである。」と定義している。

 ある企業が得意先から受注して加工する場合にも、1社では保有していない技術を要することが良くある。その場合、関連企業に回して部分加工を再外注する、「仲間取引」といわれる形態で対処する。最終的な納入責任は最初に受注した企業がもつため、あたかもその企業がすべて加工を完結させたかのように見える。機械加工分野で専門特化した小企業が存続できたのは、「仲間取引」の連携によって専門技術を相互に補完する協同体制が形成できたからである。個々の専門加工業者が孤立して存在していたのでは、その専門技術の仕事しか受けることができない。また、発注企業にしてみても、個別の技術をそれぞれの外注先にばらばらに注文していたのでは、コストも労力も膨大になる。発注側・受注側ともに系列外取引で少量多品種の加工外注を成立させるには、受ける側が関連する加工総体を取り扱える方が、双方にとってメリットが大きい。「仲間取引」というネットワークが形成されていることは、迅速に対応できる点でも高い評価を得ている。

 「仕事の回し合い」について、加工業においては「関係がある」(49.2%)、「今後求めたい」(22.3%)とする事業所は71.5%に達している(表1)。加工業を中心に「仲間取引」への期待は強い。

 かつては「仲間取引」の機能として、大量受注に対応できる「仕事量の平準化機能」が重要であったが、単純繰り返しの量産加工が減少していく中でその機能は低下している。今後はむしろ異なる機能間での「技術・技能の相互補完機能」がより重要性を増すと考えられている。難易度の高いかつ高精度な加工技術を求めて、産業集積地大田区などの企業に引き合いが増加している。今後一層開発機能を高めていく日本の産業の要請に応えるには、専門性が高く、相互補完性があるということが最大の利点になる。

 国内の大手メーカーが従来の系列を崩して新しい取引関係を開拓し始めている。発注形態も個別パーツの注文でなくユニットでの一括発注に切り替える傾向にある。それに対応するには、少量多品種受注を拾い集めて、複数の企業の技術を取りまとめることに慣れている「仲間取引」ネットワークが有効に機能する可能性を持っている。

 しかし、産業集積地を中心としたネットワークが形成されているといっても、現在国内の取引関係は広域化している。それぞれの分野においてオンリーワン的技術を持った企業は、全国の様々な地域に存在している。それらの得意技術が相互に補完しあうためには、狭い地域内のアナログ的な企業連携だけでは限界がある。企業者相互の顔が見えることは重要であるが、日常的な取引関係を持続するためには新しいデジタルネットワークを構築することが必要となっている。

 大田区内企業約40社がNMK社を中心に、統一したCADを用いてモックアップから金型設計・製作、プラスチック成形まで一貫した生産ネットワークを形成し、様々な企業からの発注に対応している。営業から製造まで40倍のキャパを持ったグループとして、スケールメリットを生かしつつ分業による専門性と相互補完を実現した事例である。

 またNMK社は、大田区周辺の城南地域、川崎市などに立地する金型メーカーを中心として「金型熱血集団JAM」を組織した。匠の技を持った金型のプロ集団として、日本の製造業が求めるハイテク製品、一般部品などあらゆる要求に応じる「精密金型製作軍団」を標榜している。

 他にも、「NCネットワーク」や「ものづくりタウン21」など、国内外の受発注取引の促進を目的としたWEBサイトが活用され、意欲的な企業がこのネットワークに参画している。このようなデジタルネットワーク形成が日本の生産連携を新たに構築する基盤になると期待できる

6.産学連携をバネにした脱下請への挑戦

 国内の生産量が縮小傾向にある中で、下請仕事を主としてきた企業も受注を当てにできなくなり、自社製品の開発を行ったり、独自技術を生み出したりしてそれを売り物にし始めている。

 しかし社内の経営資源に乏しく、開発力の基礎となる知的資源は外部に依存しなければならないところが多い。そこで中小企業が大学などの研究機関と連携を求めるケースが増えている。大学側もTLOによる技術移転や、産学連携窓口を設けて企業との提携を推進する体制を整えている。

 大田区産業振興協会では、平成10年から産学交流の仲介を行う相談員を配置し、東京都内及び周辺に立地する大学と区内中小企業を結びつける事業を続けてきた。大学の研究者が専門とするテーマと中小企業の開発課題を具体的にマッチングする努力が実りつつある。地元の東京工業大学と40年に及ぶ付き合いをしている区内企業があるが、多くの中小企業は大学の敷居が高いという意識をもっている。双方の間を取り持つコーディネータの役割が求められていたのである。

 15年度から取り組み始めた事業として、「大学・中小企業モノづくりマッチング」がある。大学側のニーズとして、研究開発にかかわる試作品や特注部品の製造、また設備・装置類の製作などがあるが、国立大学内でも技官が少なくなり、そうした機能が低下している。技術力をもった中小企業がこのような要求に応えることは可能だが、相互の交流がなく情報を得られないため両者を結ぶ接点がない。そこで、双方のニーズとシーズを引き出せるような仲介機能を果たすため、データを収集してシステムの構築を進めている。しかし、実際に結合させるのは人の介在が欠かせない。ここに新しい形で受発注あっせんの役割が求められている。従来の発注企業からの加工依頼を受注企業につなげるという役割から、開発案件に関わる包括的な依頼に対応できる企業を探し出して紹介するという、トータルなコーディネーション機能に高めていくことが必要である。部品製造などの単独の加工機能からシステムとしての開発機能を引き受けるという役割であり、企業側も単独形態では受けられないことが生じてくる。そのため受け皿となる共同受注組織を形成する必要がある。加工業者が共同化する動きは以前から見られる。また、横請型「仲間取引」ネットワークが存在することは先述したとおりである。これらの自然発生的な連携組織を「開発対応組織」として意識的に再編し、新たな受け皿機能が発揮できるようになることにより、個々の集積依存型中小企業は下請を脱し、独自のモノづくりメーカーとして飛躍するチャンスにするべきであろう。

本論文は 「平成15年度 国内外の環境変化に伴うわが国機械部品産業の対応方策に関する調査研究報告書」より担当執筆部分のみを抜粋いたしました。
発行者 社団法人 日本機械工業連合会
財団法人 素形材センター
報告書名 「平成15年度 国内外の環境変化に伴うわが国機械部
品産業の対応方策に関する調査研究報告書」
発行年月 平成16年3月

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