少子高齢化時代のマンパワー・すべての世代が働く社会に
2010/04/19
大田区産業振興協会・専務理事 山田伸顯
あふれる若年失業者
日本の労働力人口(就業者と失業者の計)は1998年をピークに減少を続けている。総務省の調査によると、09年の労働力人口比率は59・9%と戦後初めて6割を割り込んだ。65歳以上の高齢者比率の増大によると考えられる。しかし、15-24歳の労働力人口が低下しているのに、若年層の失業率は9%台の高位にある。高校生の就職内定率は、昨年12月末現在で74・8%と前年同期より7・5ポイントも悪化した。就職できない若者が全国にあふれ出ようとしている。
リーマン・ショック以降の雇用の縮小で、建設業や製造業を筆頭に多くの業種で就業者数が減少した。一方、医療・福祉分野では02年からの7年間で147万人(31%)増加している。特に老人福祉・介護事業の従業者数は、事業所・企業統計調査で01年と08年を比較すると、全体でおよそ40万6000人増の92万人となった。昨年10月に政府が打ち出した「緊急雇用対策」でも、介護分野を成長分野と位置づけ「働きながら職業能力を高める」雇用プログラムに取り組むとしている。それほど人材不足が生じているということだ。
これら医療・福祉関連の事業所の98%は、常用雇用者100人以下の中小企業である。医療・福祉に限らず、不況期こそ人材確保のチャンスと考える中小企業は多いが、大学生の就職意識は相変わらず大企業志向が強い。産業能率大学が昨年11月末実施した調査によれば、今春の採用数が予定より不足する企業は34%にも達している。それでも厳しい就職環境を反映してか、毎日コミュニケーションズが11年3月卒業予定者を対象に今年実施した就職意識調査では、減少傾向にあった「ヤリガイのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」という回答が増加。「中堅・中小企業がよい」と合わせると47・6%で、「大手企業がよい」を少しだが上回っている。
中小企業を受け皿に
中小企業は事業所数が全体の99・8%あり、従業者数が87・7%を占めることから明らかなように、日本の産業の主軸を担っている。就職先の大半が中小企業にもかかわらず、若者の中小企業に対する志望動機は決して高くない。そこで、国や自治体では、中小企業の魅力を若者に伝えるべく、さまざまな出会いの場を設けてきた。ひとつは、経営者自ら自社の技術や特長を語り、そのメッセージを受け止めた若者がやりがいを見いだしていく、中小企業とのマッチング事業である。また、高校生のインターンシップや小中学生の職場体験を通じ、実社会との接点を年少期に持つことによって、自分の生き方を考えるきっかけを与える学習も始まった。
情報過多の時代、仮想空間でのゲーム感覚に慣らされている年少者にとって、実社会の活動に参加することはかえって新鮮な体験となる。少子化社会においては、一人ひとりの若者がより貴重な人材として育成されなければならない。団塊の世代がひしめいていた時代と異なり、落ちこぼしは許されないのだ。そのためにも社会性を早期に身につけ、学ぶことや生きることの意義を自覚できるさまざまな機会を用意する必要がある。
医療費負担の軽減も
一方で、高齢者が社会参加を続けることも、生きがいの観点だけでなく、年金や医療など増加の一途をたどっている社会負担を軽減する上から求められている。65歳以上人口が50%を超える限界集落においても、高齢者が元気に仕事している地域が現れている。代表的な事例は徳島県上勝町である。この町は「葉っぱビジネス」で全国的に有名になった。おばあちゃんたち(中には90歳を超える)が、料理屋のつまに出す葉っぱを集めて、農協を通じて全国に出荷する事業を確立したのだ。株式会社「いろどり」の横石知二代表が仕掛けたビジネスである。年商1000万円を超える農家も現れ、高齢者が子供たちと孫のために家を新築したため、多くの家族がUターンしてきた。老人医療費は県下で最低水準の最も元気な町となった。働くことに勝る治療と健康法はない。
若者から高齢者まで生きがいを感じて労働し、社会参加する仕組みを構築することが、これからの日本が取るべき基本戦略である。
(日刊工業新聞 2010年3月22日付「卓見異見」に掲載)
