財政依存からの脱却・地方交付税交付金をめぐる攻防
2009/12/24
財政依存から脱却目指せ
大田区産業振興協会・専務理事 山田伸顯
地方交付税交付金は2010年度概算要求額が09年度を1兆円上回る17兆4000億円となった。新政権による事業仕分けでは地方交付税も俎上(そじょう)に上がったが、各県知事から批判が相次ぎ、全国知事会が増額提言を採択している。
地方交付税交付金は、各自治体の収入額が不足する場合に国税の一定割合を交付する制度であり、財源の地域間格差を是正する役割を果たしてきた。しかし、不況の影響で愛知県も交付団体になり、09年度で地方交付税が交付されない都道府県は東京都だけである。
自治体の収入減深刻
自治体は従来3割自治と言われ、7割の事業執行を分担しながら自前の財源が30%しかなく、補助金をあてにした財政運営を強いられていた。00年に「地方分権一括法」が施行され、財政面では三位一体改革で国からの税源移譲が行われた。しかし、補助金および交付税交付金の減額の方が大きくなり、地方はかえって財政が逼迫(ひっぱく)した苦い思いを持っている。
この地方交付税は、自治体の裁量に委ねられるべき財源である。しかし、例えば国の事業に沿って地方の事業を行った場合に認められた地方債の償還も交付金に算定されるため、自治体は国の意向に従いやすい。その結果、多くの自治体が国の景気対策に同調して財政を無理に拡張してきた。
地方交付税に依存している自治体が、国の補助金削減に代わって交付金増額を要求している。これに、国が借金をしてでも応える姿勢を見せている。これでは国と地方の関係は変わらない。国への依存性から自治体の財政規律は緩み、国の歳出は肥大化して際限ない国債依存に陥っていく。
累積債務、将来につけ
我が国の累積債務は、地方自治体の債務を合わせると1000兆円とも言われ、国内総生産(GDP)の2倍にも達し、先進国の中で飛び抜けて悪化している。今年度の税収は36兆9000億円に落ち込む一方、第2次補正予算で7兆2000億円の経済対策を決定したため、国債発行は最悪の53兆5000億円となる見通しとなった。将来につけを回して、現世代が次世代の負担する税財源を食いつぶしている状態である。
学ぶべき事例は夕張市だ。エネルギー政策の転換により産業の構造変革を迫られた夕張市は、石炭の減産政策に伴って補填(ほてん)される補助金を多用し、「炭鉱から観光へ」とかじを切った。しかし、強気の政策が裏目に出て財政が困窮し、それを隠すため粉飾決算を続けてきた。その結果、財政再建団体として、10億円しかない税収で350億円の赤字を18年間で解消しなければならない。ピーク時の60年には11万人を超えていた人口が現在1万1000人台へと激減している。中学校は今年度中に3校が1校に統合され、病院を診療所に変え、公共施設の統廃合を進めている。最大の住民負担と最小の行政サービスで再建への道を歩まなければならない。
夕張市よりも財政状況が悪い自治体は他にも多数ある。国も地方も借金まみれとなっている。国民の個人金融資産が1400兆円あるから、国の借金は国内で賄えるという能天気な議論がある。高齢化が進むにつれ貯蓄を取り崩す世帯が増えるため、家計部門の貯蓄率が急激に低下している。若者は自分の将来に備えて、消費を控え貯蓄に回す傾向にある。年金をはじめとする社会保障に信頼を置けない国では、消費増による景気回復を期待できない。
地方分権で経済自立
地方分権は財政の効率性を高めるうえでも有効である。消防・警察、義務教育、社会福祉、災害復興など全国一律に保障すべき最低限のサービス以外は、各自治体に任せる方が地域の実情にあった適切なサービスが提供でき、無駄を最小限にできる。財政支出だけに頼らず、地域の企業や住民の協力を得られるような事業の仕組みを作ることが重要である。
自治体の事業を支える収入源は、何よりも地域の経済力に依存している。夕張においても、補助金に依存しなかったメロン農業は、全国ブランドを勝ち取るほど地域の有力な産業に成長した。この際、国も地方も補助金のばら撒きをやめ、新時代の産業育成と雇用創出に重点をおいた政策展開に集中すべきである。
(日刊工業新聞 2009年12月21日付「卓見異見」に掲載)
