松原大田区長訪タイ随行出張レポート
2009/08/04
松原大田区長区長訪タイ随行 出張報告
(財)大田区産業振興協会 企業支援グループ
取引促進チーム 小島洋子
期間 : 6月28日(日) ~7月1日(水) 4日間
出張者 : 松原大田区長、伊東産業経済部長、自治体国際化協会大田区派遣 矢島
山田専務理事、高月GD、上原TL、小島 計7名
出張スケジュール:
| 月日 | 午前 | 午後 | 夕方 | |
| 1 | 6/28 | 移動日 | ||
| 2 | 6/29 | 1.OTP見学 2.アマタナコン工業団地内 企業交流会 |
3.泰日工業大学視察 4.タイ工業大臣との面談 |
5.アマタ社と打ち合わせ |
| 3 | 6/30 | 6.泰国三菱商事訪問 7.JETRO Bangkok 訪問 |
8.遠藤照明タイランド訪問 | |
| 4 | 7/1 | 移動日 | ||
今回の出張は移動日を除くと正味2日間で、OTP見学と企業交流会を行い、工業大臣との面談を含む5箇所を訪問するというタイトなスケジュールであった。
OTP見学
訪問先の応対 : AMATA社 ヴィヴーンMD、鈴木様、須藤様、渡辺様
- 車中でアマタ社員からの説明を聞きながらOTP管理棟へ向かう。以下その説明。 現在アマタナコン工業団地は操業中の企業が約460社、今後入居予定も合わせて約500社が入るタイ国内最大級の工業団地である。このうち約6割以上を日系企業が占めているため、アマタ社としても日本人スタッフを拡充して対応の向上に努めている。通常タイでの貸工場の単位は1000㎡からであるが、日系の中小企業にマッチするよう、320㎡という小単位でアマタ社が特別に用意したのがOTPである。 ‘92年のレムチャバン港開港、’06年のスワンナブーム空港開港で、バンコク東側の交通利便性が向上するに従い、アマタナコンは他の工業団地の追随を許さず規模を拡大し続けている。
-
OTP本部管理棟にて区長がヴィヴーンMDの歓迎の辞を受け、大田区とAMATAの今後の連携を確認し合った。 - OTP工場見学 区長は入居企業5社を各担当者の説明で詳細に視察 NAMBU CYL (THAILAND) CO.,LTD.(特殊油圧シリンダー製造) 早乙女工場長本社が休業状態の間も利益を確保し、結果的に連結決算の収支をトントンに。仕事量激減による余剰時間に技術講習を行い、本社と同レベルの作業が可能なまでに向上させた。
EZAKI INDUSTRIAL (THAILAND) CO., LTD. (トラックエンジン用配管)
SHINKO WEL-TEC SERVICE CO.,LTD. (溶接用電極の製造)
FISA THAI TECHNO CO., LTD.(金型用主要部品の製造) (操業前) 広山様
DAIWA HARNESS (THAILAND)CO., LTD.(自動車用ハーネスの製造) 喜田MD
アマタナコン工業団地内企業交流会
6/29 11:30~13:30 アマタスプリングカントリークラブ内レストランにて
OTPと在タイ日系企業合わせて22社25名の参加があった。
各参加者からの挨拶スピーチを聞きながら会食及び情報交換を行なう。各社の挨拶の中で、「本社よりタイ工場の方が利益があがっている。タイを本拠点とした方が良いぐらい。」という話があり(Nishii Fine press)、ここでも日本とタイの景況感の差が感じられた。協会ではこれまでにも同様の交流会を開催しているが、初めて参加した企業から「こうした機会が今まで少なかったので、これを機に情報交換の機会を作りたい」という声があった。タイ進出企業の情報への飢餓感は想像以上であり、協会は今後も情報交換の場を提供することを期待されていると感じた。
区長からは、羽田空港の再国際化についての説明や、タイ現地企業と進出した大田区企業との協力関係の強化を期待する内容のスピーチがあった。区長と同席して直接歓談出来る貴重な機会ということで、参加者も積極的に区長に話しかけ、ビュッフェ形式の昼食だったが料理を取りに行く暇がないほど熱心に話し込んでいた。
最後に山田専務理事が「国内はいまだ厳しい状況にあるが、こういう時こそ協会として、海外市場を開拓するため連携協力に努めたい」という挨拶で会を締め括った。
泰日工業大学
対応 : クリサダ学長、水谷先生
同校は、泰日経済技術振興協会の働きかけで日系企業を中心としたタイ産業界から集められた寄付金により、2007年に設立された画期的な工業大学。タイに進出した日系企業がタイ人の管理職人材不足に苦労していることから、一つの解決案として誕生した。
ビデオによる説明のあと、水谷先生の案内で新学期の始まったキャンパス内を見学。作業棟内では学生たちが実習中であったが、一人ひとりがいきいきと作業をしている風景は、この大学の存在意義を証明するものだと感じた。休み時間中の学生が集まっていた中庭では、区長も学生の輪の中に入って談笑し、礼儀正しく明るいタイの若者とふれあい、束の間くつろいだ様子だった。今年の10月20日、教員4名、学生17名で大田区を訪問する計画があるとのことで、区長が時間を作って再会することを約束した。
タイ工業省訪問
チャーンチャイ工業大臣、チタワン・タイ投資委員会副長官との面談
わずか30分間のアポであったが、工業大臣及び副大臣以下工業省幹部が列席し、マスコミも多数入るなど、最重要レベルの受け入れ態勢であった。背景として、この前週にバンコク日本人商工会議所(JCCB)が日本政府に対して「在タイ日系中小企業対策についての要望」を提出していたことが考えられる。タイ政府は大田区の今回の訪問もこれに関連したものと考え、迅速な対応をアピールした。
面談の中で工業大臣はOTPについても認識しており、タイ・ローカルの中小企業と大田区からの進出企業との連携を希望している、との表明があった。区長は、大田区の技術力と中小企業のネットワークを生かした、タイとの協力関係を約すると同時に、来年の羽田空港再国際化に関しても説明し、バンコクとの時間的・距離的短縮によるメリットを強調した。
JCCBが提出した要望書の内容は、翌日の訪問先で説明され初めて判明したことであったが、大臣との面談の内容と合致して、非常にタイムリーな訪問となった。要望書の主旨と対応策は以下のとおり。
要望主旨: 景気低迷期の今こそ、タイに進出した日系中小製造業に対して、日本政府として手厚い融資優遇を実施・支援して欲しい。融資支援なしでは、低迷するタイ工場・日本の本社もろとも立ち行かなくなってしまう。
対応策: 現在タイ政府は中小企業開発銀行融資や中小企業信用保証公社(※注)による信用保証をタイ企業に限定しているが、今後在タイ日系中小企業も活用できるよう検討に入った。(※注:タイの金融機関のひとつSmall Business Credit Guarantee Corporation略してSBCG、監督機関は大蔵省と工業省。)
アマタ社との打ち合わせ
対応:アマタ社 ヴィクロムCEO、ソムハタイ副社長他
OTPの管理業務委託契約を結ぶアマタ社のCEOヴィクロム氏に招かれ、同社のゲストハウスでアマタ社幹部と科学技術省職員等、総勢16名で会食。
区長は、これまでのアマタ社の大田区に対する手厚い支援に感謝の意を表するとともに、今後も引き続き協力を要請し、ヴィクロム氏がこれを快諾した。また同氏は、今後日本の中小企業にもっと多くタイに進出して欲しいと考えており、アマタで受け入れる用意があるとして、大田区に協力を要請した。
区長が来年の羽田空港の再国際化について説明すると、同氏も、現在構想中のサイエンス・シティ(科学技術都市)について語り、初会談ながら終始打ち解けた雰囲気であった。
泰国三菱商事
対応:山辺社長、川合業務部長
泰国三菱商事の事業説明とタイの政経情勢についてわかりやすくレクチャーして頂いた。また、バンコク日本人商工会議所(JCCB)の前会頭でもある山辺氏から、前週にJCCBが提出した要望書について、ここで初めて説明を受けた。以下、要望書を作成するに至った経緯を山辺氏が説明。
タイ自動車産業50年の歴史の中で、メーカーから下請けまで、周辺産業全体が育ってきている。タイは自動車を国産では考えていないため、技術盗用の危険性が薄いことから、日本のメーカーが進出しやすく、Tier3まで集積している。これだけ日本からの進出企業の集積がありながら、タイ-日政府間の中小企業への支援不足は著しく、今回の経済危機で支援策を望む声がこれまでにないほど高まった。JCCBもこの状況を看過できないと判断し、タイ-日両政府に働きかけたところ、日本よりもタイ政府が敏感に反応し、前述した対応策の検討に入った。一方日本政府は、日本の製造業の空洞化に拍車がかかるという考えからか、海外進出企業に対して支援が薄い。しかし、生産拠点がグローバル化している現在の流れの中では、日本政府はもっと真剣に、中小企業の海外進出に向きあうべきである。
JETRO バンコクセンター
対応: 秦次長、坂本ディレクター、矢島シニアアドバイザー
タイ経済の現状と見通しについての説明
タイでは輸出産業では影響が出ているものの、内需の落ち込みが少なく、アジア通貨危機に比べれば国民に深刻さはあまりない。それよりも政情不安が招いた観光産業への打撃が大きく、今なお復調の兆しが見えていないとのこと。
JCCBの要望書についての説明
骨子と対応策については三菱商事で解説頂いたものとほぼ同じ内容。ただし、対応策としてあげられている「国際協力銀行(JBIC)の在外中小企業向け融資」については、実際利用する段になるとメリットが小さい、使いづらいなど、中小企業からの不満もあり、現実的な対策とは言えないのではないかと懸念している。また、「日本貿易保険(NEXI)とタイ輸出銀行の間で再保険協定の締結」については既に協定締結済みで、最も早く実現した対応策だという。
長期的な取り組みとして挙がっている「中小企業診断士制度の充実」については、JETROは以前から取り組んでおり、日本から診断士を招いて制度設立や診断士養成指導を行なっている。明記していない課題は、タイの税務調査が恣意的にやってくることへの不満など多岐に渡るが、それら全てが直接持ち込まれるJETROバンコクの使命は大きいと改めて認識した。
遠藤照明タイランド
対応: 柳井社長
同社のタイ進出は‘89年、投資奨励ゾーン1のバンプリー工業団地内に100%日本向け輸出用として工場を設立し、のちにタイ国内向けにも生産を開始した。同じ工業団地内に2つの工場を持ち、第一工場で主力の照明器具、第二工場では収納家具も生産する。'09年3月期の生産高は9億318万バーツで、出荷先の割合は日本への輸出が85%、タイ国内向け8%、他国への輸出が7%である。主に商業施設用の照明器具や照明設備を生産しており、タイ伊勢丹・東急ストア・イオン・アマタナコン内の日系企業の工場等に製品を納入している。この経済危機の影響で’07~’08年の決算値が落ち込んだが、これは円建て決算の為替の影響によるもので、実際の出荷高は決算値ほどの下落幅はないという。
会議室で会社説明を聞いた後、第一工場を見学させて頂いた。大田区内にはなかなかない、板金-プレス-溶接-塗装-焼付-仕上-点検-組立を一貫して行うライン工場である。ラインと言っても、一部の工程を細分化したセル生産方式を取り入れており、複雑なものは別に取り分けて作業をしたり、スタッフの帽子の色を分けて管理監督者等の役割分担を明確にするなど、細やかな配慮は日系の工場ならではという印象を受けた。点灯テストの全数検査、バーコードによるトレーサビリティーの徹底なども、同社の技術力に対する自信の表れであろう。一方で、複数のプレス機を使い、作業員が順次ワークを受け渡して一連の工程を完了するという、低人件費を活用した生産方式も行っており、タイと日本両方の特性をうまく生かしたシステムであると感じた。タイ人の事務員、工場スタッフを含めた社員全員が来訪者に起立して笑顔で挨拶をする。また、社内中どこも6Sが徹底されており、社員教育にも優れた企業であると感じた。
所見
- 在タイ日系中小企業に対する意識がついにタイの工業省レベルまで高まってきていることを感じた。今回はJCCBの要望書の影響が大きいが、日本政府に提出したものをタイ側がいち早く反応したことで、タイ政府が日系中小企業をいかに重要視しているかがわかる。
- 今回の面談のアポイントは全て、アマタ社の強力な後押しがあって実現した。アマタ社は現地の政府関連機関や大手メーカーのトップに広くコネクションを持っており、それらを惜しみなく駆使して大田区のために取り計らってくれた。今後は、アマタ社にとって大田区がかけがえのないパートナーとなっていかなければならないと感じた。
- 今のところOTPの新たな入居企業は、大田区企業では頭打ちの感が否めない。今後のOTPの発展はハード面だけではなくソフトの面、すなわち、国内と同様に発注開拓支援が重要となってくるのではないか。まずは進出している大手日系企業を新規顧客として獲得することを目標に、アマタのコネクションを活用して、交流会や個別訪問を不定期でも続けていく必要がある。
- 泰日工業大学で見た光景は、日本にはないタイの若者の力強さを象徴していた。遠藤照明や南武のタイ人スタッフを見ると、優秀な人材の育成がタイの日系企業には最重要課題であり、その使命を担っている泰日工業大学の存在意義は大きいと再認識した。
- 今回の訪タイミッションに参加した、大田区から自治体国際化協会に派遣されている矢島氏の活動を聞いて、ASEANは日本から見るよりもずっと緊密で近い関係になっていることを感じた。大田区がASEANの拠点となるタイにOTPを持っているという優位性をもっと活用し、ASEAN全体へのネットワークをどのように展開していくかが今後の大きな課題である。
以上
