環境貢献度 正当な評価を-中小企業のCO2削減策-
2009/10/20
中小企業のCO2削減策「環境貢献度 正当な評価を」
大田区産業振興協会・専務理事 山田伸顯
厳しい「25%」公約
鳩山新首相は、外交デビューとなった国連気候変動サミットの開会式で、2020年までに日本の温室効果ガス排出量を90年対比で25%削減すると国際公約した。これには日本経団連をはじめ、すでに06年に90年対比でマイナス5.1%を実現している鉄鋼業界が、産業界を交えて議論し国民の合意を得るよう強く注文をつけた。
日本は、70年代の2度のオイルショックを契機に世界で最も進んだ省エネルギー技術を作り上げた。鉄鋼業はその最たるものである。京都議定書では先進国の温室効果ガス排出量について、90年を基準年として欧州連合(EU)8%、米国7%、日本6%と削減目標値を設定した。東欧の統合により削減しやすかったEUに比べ、徹底的な省エネを追求してきた日本の産業界にとってこの数値目標自体も達成が難しい状況だが、「鳩山ドクトリン」ではるかに厳しい目標数値を掲げたのである。
国内の対策だけでなく、日本の先進的環境技術を他国に供与して削減した排出量を取引するといった方法も講じなければならないだろう。もし排出量の多い鉄鋼業などの素材産業が海外に全面移転しようものなら、日本の国際競争力の源泉を失うことになる。まして海外から素材を調達するなら、今度は輸送に伴うCO2増加につながってしまう。
この温室効果ガス25%削減が産業界、中でもただでさえ受注減少にあえいでいる中小企業に一体どのような影響を与えるのか。また企業としてはそれにどう対処すべきか。大企業が受け持つ素材産業と比べ、CO2排出量が少ない加工業を担っている中小企業にとっては、手の打ちようもないとして無視できるだろうか。
コスト低減に効果
これまで製造業において、大企業の温室効果ガス排出量が減少傾向にあるのに対し、中小企業では増加傾向にあった。資金不足や技術的対応が困難などの理由で取り組んでこなかった中小企業に対し、「国内クリーン開発メカニズム(CDM)制度」という大企業が中小企業に技術・資金を提供して、これにより達成されたCO2の排出削減分を国内クレジットとして売買できるスキームの導入も検討されている。日本の製造業は、主に中小企業が部品を生産し、大企業がアセンブルする体制で成り立っていることから見れば、温室効果ガス削減が大企業のみで実現できることはありえない。これからは中小企業に対する削減圧力が高まると予想される。
しかし、中小企業の中には受動的にCO2削減を強いられるだけではなく、能動的に取り組んでいる企業も数多くある。新興セルビック(東京都品川区)が開発した「廃材ゼロの卓上超小型射出成形機」は、成形過程の副産物であった不要なプラスチックを生じさせない、したがってゴミを出さずに製品だけを生産する画期的なものである。成形機の装置重量が17キログラムしかないことでも大幅なCO2削減になっている。
また、大嶋電機製作所(群馬県太田市)の「成形型内成膜システム技術」は、一つの金型内で成形と成膜、組み立て、接合まで完結したシステムを構築することにより、100%近い歩留まりを実現させたものである。不良品ゼロの量産技術は環境負荷を低減させることにも貢献している。この二つの革新技術は、それぞれ「ものづくり日本大賞」の経済産業大臣賞、内閣総理大臣賞に輝いている。
ウィンウィン関係
こうしたエコロジーの実現は、無駄を排除することでコスト低減ももたらす。しかし、今後CO2削減を国民的運動として取り組む観点から見れば、コストカットで一方的に顧客側のみが利を得るのでなく、これらの環境貢献度の高いイノベーションに対する評価を正当に行う必要がある。大企業と中小企業が低炭素社会実現という共通の目的に向かってともに協力し合う、新しいウィンウィン関係を今こそ再構築すべき時である。
今回の国際公約を機に、環境立国に向けて舵を切る覚悟を決め、新しいビジネスの可能性を見いだすチャンスととらえよう。地球環境の恵みを次世代が同じく享受できるような持続的発展のために。
(日刊工業新聞 2009年10月12日付「卓見異見」に掲載)
