2015年02月23日 公開

「医工連携支援事業――有望市場参入へ医師・中小企業・製造販売会社をマッチング」

睦加工写真
その一社、睦化工は飲料や薬品の容器のキャップを射出成形で量産している。徹底した衛生・品質管理が評価され、地価も人件費も高い大田区内で量産の仕事を続ける貴重な存在だが、古川亮一社長は「今後、受注量は減っていく」とみて、平成20年に「開発事業部」を新設。3Dプリンタを導入し、試作部品の開発事業に参入した。同時期に公益財団法人大田区産業振興協会の各種支援事業の利用を開始、平成24年11月に大田区産業振興協会(以下、当協会)が「大田区医工連携支援センター」を開設したのを機に医療分野に乗り出した。

医療機関の先生方は新たな手術・治療法のアイデアを温めているが、必要な「道具」を作れない。当協会の職員・産学連携コーディネーターが、アイデアを形にできる企業を紹介・マッチングし、共同開発案件が増えていった。大田区医工連携支援センターは、その出会いの場となる拠点として開設した。センターにスタッフが常駐する東京労災病院をはじめ、協力関係にある医療機関は東邦大学医学部、鶴見大学歯学部など全国へ広がった。睦化工のケースでも、藤原万昌産学連携コーディネーターが医療機関の関係者やメーカー関係者を紹介。患者のCTやMRIのデータを3Dプリンタで立体造形し、医師が手術や治療の参考にする仕組みを開発中だ。

展示会写真
しかし、医療分野では製品の開発に成功しても、市場投入には薬事法上の認定を受けるなどの高い障壁がある。そこで大田区と当協会では、東京都文京区に集積する医療機器の製造販売業との連携を強化。平成26年2月に文京区と大田区が「医療関連産業の連携に関する覚書」を締結し、文京区の「売るプロ」と大田区の「作るプロ」をマッチングして市場投入を加速する戦略をとった。平成27年1月29日には初の共催イベントとして、文京シビックセンターで「モノづくり技術展示会・交流会」を開催した。

自社の技術・製品を展示した大田区企業は26社。半導体・光学機器・航空機などに金属の精密加工部品を提供する大志工業は、20年ほど前に医療分野へ参入し、アレルギーの少ないチタン製のジョイント部品をカテーテル用に提供している。事前に全体で約40件の商談をセットしたため「具体的な話ができた」(吉田文彦取締役)という。また、真空ポンプ・コンプレッサーメーカーで手術用の余剰麻酔ガス吸引ポンプで国内市場を押さえる三津海製作所も、「これほど商談の相手が熱心な展示商談会は珍しい」(渡邊幸一社長)と話す。

睦化工も展示会・交流会に参加。新たな商談に臨んだ古川社長は「来年度には医療分野の売上げが期待でき、開発事業部の売上比率が全社の20%まで拡大する」と話す。大田区中小製造業の医療分野への挑戦は、先頭集団が「出口戦略」を模索する段階へ入る。

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